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 南極、月面など極地に設ける居住拠点のための技術を、砂丘のキャンプ・グランピング施設にも利用する──。

 鳥取市の広告代理店、アドセンターパルは2022年4月26日、同社を実施主体(代表事業者)とするコンソーシアムが鳥取砂丘⻄側エリアにおける滞在型観光施設運営の優先交渉事業者に選ばれたと発表した。同コンソーシアムに参画するアミュラポ(amulapo、東京・新宿)が同日、企画・設計・施工を担うミサワホームも翌日の27日、それぞれの立場から事業概要を発表した。

選ばれたコンソーシアム「鳥取砂丘ムーンパーク」(グループ名)による提案概要書の表紙(資料:鳥取市)
選ばれたコンソーシアム「鳥取砂丘ムーンパーク」(グループ名)による提案概要書の表紙(資料:鳥取市)
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コンソーシアム「鳥取砂丘ムーンパーク」が提案しているドームテントの平面イメージ。以下、図やイメージはプロポーザルにおける提案時点のもので、変更される場合がある(資料:ミサワホーム)
コンソーシアム「鳥取砂丘ムーンパーク」が提案しているドームテントの平面イメージ。以下、図やイメージはプロポーザルにおける提案時点のもので、変更される場合がある(資料:ミサワホーム)
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 鳥取市と鳥取県が「鳥取砂丘キャンプ場(仮称)」の運営事業者を公募。応募4者のなかからコンソーシアム「鳥取砂丘ムーンパーク」(グループ名)を選んだ。同コンソーシアムは、グランピング事業に乗り出している前出アドセンターパルの他、ミサワホーム、ミサワホーム総合研究所、ミサワホーム中国、amulapo、スマイルキューブ(鳥取県南部町)、田淵金物(鳥取市)の7社で構成される。

 鳥取砂丘の西側エリアでは、1970〜80年代に鳥取市や鳥取県が公共施設群を整備し、現在、機能面の更新時期を迎えている。市と県は、これら施設群を一体的に活用して民間サービスを提供する事業者の公募プロポーザルを実施。キャンプやグランピングを主目的とする前提で、既存施設の一部改修や解体、新たな施設の整備の提案も可能とした。

鳥取砂丘ムーンパークの位置付け。鳥取砂丘西側エリアに位置する(資料:ミサワホーム)
鳥取砂丘ムーンパークの位置付け。鳥取砂丘西側エリアに位置する(資料:ミサワホーム)
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3拠点エリアから成る鳥取砂丘ムーンパーク敷地の全体イメージ(資料:ミサワホーム)
3拠点エリアから成る鳥取砂丘ムーンパーク敷地の全体イメージ(資料:ミサワホーム)
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 公共空間の活用に際し、幾つかの条件が付けられている。例えば、山陰海岸国立公園に立地するため、公園事業として環境省の執行認可が下りる提案でなければならない。事業期間は10年間。適切な事業運営を継続できると認められた場合は、さらに最大10年間の更新を可能としている。

 当選したコンソーシアムは、「宇宙・ 地域・未来」をコンセプトのキーワードに掲げ、「TOTTORI SAKYU MOON PARK 鳥取砂丘ムーンパーク(仮)」と名付けた滞在型観光施設を提案。さまざまなスポーツやアクティビティーの他、学習体験なども重視し、幅広い世代が楽しめるキャンプ・グランピング施設の整備・運営計画を示した。

 審査講評によると、「 既存の利用者に配慮しつつ、丸1日楽しめる提案」である点、「構成事業者それぞれの知見の積み重ね」を感じさせる点、特に国立公園内のキャンプ場の指定管理を経験している事業者を含み、規制のあるなかで立地を生かした工夫を期待できる点などが評価された。国内のキャンプ・グランピング施設としては前例のない「宇宙」「ムーンパーク」というコンセプトを持ち、県による「とっとり宇宙産業」の取り組みとマッチする点も当選の大きな理由となった。

 22年7月に基本協定および貸付契約の締結、同年9月に既存施設などの引き渡しを行う見込み。その後着工し、23年春の開業を目指す。

「滞在型の宇宙技術の社会実装」を目指す

 当選したコンソーシアムには、鳥取砂丘を中心に地域経済を活性化させたいという思いを共有する企業が集まっている。京都府、兵庫県にまたがる山陰海岸国立公園および同ジオパークの特性に配慮。鳥取砂丘全体の連携を考慮した「体感するエリアの構築」を目指す。

 参画するうちのミサワホームグループ3社は、全国で取り組んできたまちづくりの経験の他、極地居住のために研究・開発してきた技術を提供する。

 ミサワホームは創業間もない1968年に、南極昭和基地に建物を供給。近年は、ミサワホーム総合研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立極地研究所と共同し、「持続可能な住宅システムの構築」を目的に昭和基地をフィールドとする実証実験を重ねてきた。これは現在、未来志向の住宅や月面などの有人拠点に応用する研究に発展している。

南極移動基地ユニット。極地における設置作業の合理化および居住性能の向上などを追求し、月面における有人拠点としての利用も想定して研究・開発を進めている(写真:ミサワホーム)
南極移動基地ユニット。極地における設置作業の合理化および居住性能の向上などを追求し、月面における有人拠点としての利用も想定して研究・開発を進めている(写真:ミサワホーム)
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南極移動基地ユニット。プレハブ技術を利用して拠点構築システムを開発。「第61次南極地域観測隊公開利用研究」として、2020年に南極昭和基地で実証実験を実施した(写真:ミサワホーム)
南極移動基地ユニット。プレハブ技術を利用して拠点構築システムを開発。「第61次南極地域観測隊公開利用研究」として、2020年に南極昭和基地で実証実験を実施した(写真:ミサワホーム)
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 今回、その過程で開発した南極移動基地ユニット(トレーラーハウス)を国内向けにリプロダクトした「スペースモバイルユニット」をグランピング施設の1つとして導入することを検討する。 また、蓄えてきた知見を生かし、宇宙産業の創出に取り組む鳥取県の新産業政策に寄与することも目指す。