2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)で被害に遭った岡山県倉敷市の真備地区では、国や県、市が「真備緊急治水対策プロジェクト」を進めている。堤防の強化や河道掘削などのハード対策からハザードマップの作成といったソフト対策まで、様々な事業を実施している。それらの工事の進捗状況をリポートする。
小田川が高梁(たかはし)川に合流する地点にある真備地区の市街地では、西日本豪雨でバックウオーター(背水)の影響を受けて水があふれた。小田川の支川を含む8カ所で堤防が決壊し、約4600棟が浸水した。浸水面積は約1200ヘクタールに上る。
国土交通省中国地方整備局は小田川への背水の影響を抑えるために小田川の付け替えの他、河道を掘削したり堤防を強化したりする工事を実施中だ。
河道断面の拡幅のために掘削する土砂の量は約30万m3に上る。掘削は21年度の出水期までに完了する予定だ。
堤防の強化では、擁壁やドレーンの設置、堤防の拡幅を実施する。加えて、平均4~5mだった堤防の天端幅を7mに広げる。被災時に排水ポンプ車の作業や緊急車両の通行を止めずに、避難路を確保できるようにするためだ。西日本豪雨では堤防の天端の狭い箇所で、緊急車両の通行に苦労したという。
拡幅事業では市が用地取得、国が工事を担当する。小田川の直轄管理の区間は両岸で15.8km。天端の幅が既に7m以上ある箇所を除いた11.5kmを拡幅する。そのうち、市が用地を取得しなければならない範囲は4.9kmだった。用地取得は既に9割以上完了している。直轄堤防の拡幅事業を国と市が連携して実施するのは珍しい。
「小田川や高梁川の河道掘削などで発生した土砂を有効に活用している」。中国地整高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所の水谷一馬工務課長は、こう話す。