東京建物とシンガポールの不動産会社Hotel Properties Limited(HPL)は、「Four Seasons Hotels & Resorts」(以下フォーシーズンズホテル)と一体になった日本初の分譲マンション「Brillia Tower 堂島(ブリリアタワー堂島)」の入居を2024年5月に開始する計画だ。地下1階・地上49階建てで、高さが約195mと、計画地がある大阪・堂島エリアでは飛び抜けて高いタワーマンションになる。
22年6月時点で、建物の躯体(くたい)や外装は地上28階付近、高さが約100mまで建設が進んでいる。全体の半分ほどだが、既に見上げる高さだ。
21年4月にホテルと分譲マンションが一体になった複合タワー「ONE DOJIMA PROJECT」として概要が発表されたとき、船の「帆」をイメージしたという外観の説明があった。それを自分の目で確認できる状態まで工事が進んでいる。
建物は、延べ面積が約8万2500m2ある巨大タワーになる見込みだ。地上1~27階および38~49階が住宅フロア、地上1~2階および28~37階がホテルフロアになる。ホテルの客室数は、178を予定している。
ちょうどこれから、ホテルフロア部分の工事にさしかかるということだ。設計は日建設計、施工は竹中工務店が手掛けている。
住戸は高額だが、販売は好調である。総戸数463戸(募集対象外住戸53戸を含む)のうち、21年11月に売り出した第1期、185戸は全戸に申し込みがあった。185戸の平均価格が約1億5390万円の「億ション」にもかかわらず、申込数の平均倍率は4.6倍、一番人気の住戸は37倍になった。
その後も第2期、第3期と、段階的に販売を続けているところだ。22年6月中旬には「現時点で供給済みの274戸はほぼ全て、予約が入っている」(東京建物)という。マンションの市場価格が上昇を続ける昨今、Brillia Tower 堂島は高級分譲ながら、供給開始のたびに申し込みが殺到する状態だ。
計画地の近くには、購入を検討する人が訪れるゲストサロン(モデルルーム)がある。ここには、8億円を超える住戸をそのまま再現した部屋がある。
日経クロステックの取材に応じた東京建物関西住宅事業部住宅営業グループの加覧憲一課長は、「当社として異例の人気を示す売れ方をしている」と明かした。
加覧課長に好調の理由を尋ねると、「希少性」という言葉が返ってきた。ホテルとタワマンの組み合わせは過去に全くなかったわけではない。しかし、まだまだ珍しい。まして相手がラグジュアリーホテルの代表格であるフォーシーズンズホテルということで、購入希望者の期待が高まっているようだ。
他にほとんど例がない物件、それが希少性という意味である。差異化と言ってもいい。特に投資家は、他のタワマンとの違いが明確に分かるマンションに興味を持つ傾向にあるという。なお、ホテルフロアの床については、東京建物とHPLで持ち分案分して所有している。
似たプロジェクトとして、20年に横浜で完成した三井不動産レジデンシャルと丸紅による高級分譲マンション「ザ・タワー横浜北仲」がある。こちらは建物の上層部に、ホテル「オークウッドスイーツ横浜」が入居した。同じくホテルとマンションの一体型タワーである。ザ・タワー横浜北仲の住戸は販売開始から約8カ月で、1170戸を超える総戸数が完売する人気ぶりだった。
両者は立地や規模はかなり違うが、どちらも高級ホテルと合体したタワマンという希少性がある。それが市場の評価を一層高めたのは間違いなさそうだ。