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 高松市の景勝地、屋島の山上に新しい展望施設が2022年8月上旬にもオープンする予定だ。名称は「高松市屋島山上交流拠点施設」。同年3月末には市が愛称を公募し、「やしまーる」に決定した。市の新しいシンボルとして、地元が寄せる期待は大きい。直近では「瀬戸内国際芸術祭2022」の夏会期(22年8月5日から同年9月4日)の目玉として、市への集客の起爆剤になるかが注目される。

瀬戸内海の絶景が眼下に広がる景勝地、屋島。その山上で2022年8月上旬に新施設「高松市屋島山上交流拠点施設」(愛称、やしまーる)がオープンする予定だ(右側の建物)。屋島は平安時代末期の源平屋島合戦(屋島の戦い)でも有名(写真:日経クロステック)
瀬戸内海の絶景が眼下に広がる景勝地、屋島。その山上で2022年8月上旬に新施設「高松市屋島山上交流拠点施設」(愛称、やしまーる)がオープンする予定だ(右側の建物)。屋島は平安時代末期の源平屋島合戦(屋島の戦い)でも有名(写真:日経クロステック)
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 屋島山上交流拠点施設は現在、地上2階建ての建物がほぼ完成している。最後の外構工事の真っ最中だ。高低差がある計画地の地形を生かしつつ、蛇行する川の流れをイメージしたような平面形状をしている。直線はほとんどなく、カーブの連続である。

 曲がりくねったガラス張りの回廊が続く館内は、歩いてぐるっと1周できる。施設通路の全長は約220mある。

施設の航空写真。22年4月上旬に撮影。施設の右隣は、山上にある既存の水族館(写真:SUO)
施設の航空写真。22年4月上旬に撮影。施設の右隣は、山上にある既存の水族館(写真:SUO)
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 回廊の大部分を細い柱で支え、浮かしているのも特徴だ。施設の高さは7.71mある。施設西側の展望スペースからは、瀬戸内海や高松の市街地を見下ろせる。地中海の沿岸部を思わせるような景色を堪能できる。

屋島山上交流拠点施設の西側にある展望スペース。取材した22年6月初旬時点で建物はほぼ完成しており、最後の外構工事の真っ最中だった(写真:日経クロステック)
屋島山上交流拠点施設の西側にある展望スペース。取材した22年6月初旬時点で建物はほぼ完成しており、最後の外構工事の真っ最中だった(写真:日経クロステック)
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 敷地面積は3416.62m2、建築面積は1178.58m2、延べ面積は983.72m2。構造は鉄骨(S)造、壁式鉄筋コンクリート(WRC)造、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造、一部RC造である。発注者は高松市で、設計者はSUO・Style-A設計共同企業体、施工者は谷口建設興業・籔内建設特定建設工事共同企業体。事業費は約14億3000万円を予定している。

 日経クロステックは22年6月初旬、完成間近の屋島山上交流拠点施設を取材することを許された。写真撮影は施設の周りの歩道からだけという条件付きではあったが、やしまーるの特徴はお伝えできるだろう。記者は設計者の1社であるSUO(京都市)の周防貴之主宰の案内で、施設とその周辺を取材した。

 SUOは18年の屋島山上拠点施設基本設計国際プロポーザルで、藤本壮介氏や石上純也氏らに競り勝ち、最優秀者に選ばれた。妹島和世建築設計事務所およびSANAA出身である周防氏は、独立して最初に挑んだプロポーザルでいきなり屋島山上拠点施設の設計者に選ばれた。

細い柱で支える回廊の下をくぐり、奥の正面エントランスから中に入る。高低差がある敷地をそのまま生かして、回廊をつなげている。他にも出入り口がある(写真:日経クロステック)
細い柱で支える回廊の下をくぐり、奥の正面エントランスから中に入る。高低差がある敷地をそのまま生かして、回廊をつなげている。他にも出入り口がある(写真:日経クロステック)
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展望スペースがある回廊の下からの見上げ。頭上でカーブを描く回廊は迫力がある(写真:日経クロステック)
展望スペースがある回廊の下からの見上げ。頭上でカーブを描く回廊は迫力がある(写真:日経クロステック)
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回廊の下は日影になる。施設には日の光が降り注ぐので、山上とはいえ夏場はかなり暑い。日影があると涼みやすい。施設内は空調が利いている(写真:日経クロステック)
回廊の下は日影になる。施設には日の光が降り注ぐので、山上とはいえ夏場はかなり暑い。日影があると涼みやすい。施設内は空調が利いている(写真:日経クロステック)
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正面エントランス。屋根も波打つような形状をしている。屋根材は、地元の庵治(あじ)石でつくった特注の板状の瓦を約3万4000枚使用している。高級な墓石などに使われる庵治石で瓦を製作するのは珍しく、瓦の形から設計したオリジナルデザインだ(写真:日経クロステック)
正面エントランス。屋根も波打つような形状をしている。屋根材は、地元の庵治(あじ)石でつくった特注の板状の瓦を約3万4000枚使用している。高級な墓石などに使われる庵治石で瓦を製作するのは珍しく、瓦の形から設計したオリジナルデザインだ(写真:日経クロステック)
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屋外の通路と屋内の回廊に分かれる。屋外通路は自由に通れるようにする計画だ(写真:日経クロステック)
屋外の通路と屋内の回廊に分かれる。屋外通路は自由に通れるようにする計画だ(写真:日経クロステック)
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 回廊は所々に大きく膨らんだスペースがあり、屋内広場のようになっている。普段は飲食・物販や多目的ホール、そして平安時代末期の屋島の戦いを再現した大パノラマ展示などに充てる。

光の当たり方次第で、青みがかって見えるガラス。内部は飲食・物販などのカフェスペース。ガラスを多用し、施設の高さも抑えることで、山上の自然に施設が溶け込むように心掛けた(写真:日経クロステック)
光の当たり方次第で、青みがかって見えるガラス。内部は飲食・物販などのカフェスペース。ガラスを多用し、施設の高さも抑えることで、山上の自然に施設が溶け込むように心掛けた(写真:日経クロステック)
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正面エントランスの裏手付近。山上にある世界的にも珍しい「新屋島水族館」がすぐ隣で営業している。取材時には回廊から水槽の一部が見えた(写真:日経クロステック)
正面エントランスの裏手付近。山上にある世界的にも珍しい「新屋島水族館」がすぐ隣で営業している。取材時には回廊から水槽の一部が見えた(写真:日経クロステック)
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 取材時点では外構工事中だったので分かりづらいかもしれないが、この施設は幾つもの広場をまたぐように立っている。展望スペースだけでなく、多様な屋外広場を有するのが、この施設の大きな特徴である。広場の面積は合計で、約2600m2ある。

敷地を回廊型の施設で緩やかに区切り、複数の広場を生み出した(写真:日経クロステック)
敷地を回廊型の施設で緩やかに区切り、複数の広場を生み出した(写真:日経クロステック)
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回廊のガラスの奥に、反対側の回廊が透けて見える。敷地の高低差もあるので、見る位置によって景色がかなり違ってくる。飽きさせない工夫だ(写真:日経クロステック)
回廊のガラスの奥に、反対側の回廊が透けて見える。敷地の高低差もあるので、見る位置によって景色がかなり違ってくる。飽きさせない工夫だ(写真:日経クロステック)
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