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 地上部の全構造部材に木材を採用し、11階建て高層ビルを建設している大林組。柱と梁(はり)のユニット化や念入りな雨対策を施すことで、順調に工事を進めている。今後の展開も見据え、様々な地域から木材を調達した。

 横浜市内のJR関内駅に程近い繁華街の一角にある建設現場。仮設の養生ネットの奥に、木の構造躯体(くたい)がうっすらと透けて見える。大林組が設計・施工を手掛ける地下1階・地上11階建ての木造高層ビルだ。同社は、建て方の期間中の2021年5月21日、報道陣に現場の内部を公開した。

大林組が建設する木造高層ビルの建設現場。国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」の補助金3億円などを利用している。事業費は非公開。2021年5月21日撮影(写真:日経アーキテクチュア)
大林組が建設する木造高層ビルの建設現場。国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」の補助金3億円などを利用している。事業費は非公開。2021年5月21日撮影(写真:日経アーキテクチュア)
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大林組が建設している木造高層ビルの完成イメージ(資料:大林組)
大林組が建設している木造高層ビルの完成イメージ(資料:大林組)
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木造高層ビルの建設現場の1~2階。2021年4月2日撮影(写真:大林組)
木造高層ビルの建設現場の1~2階。2021年4月2日撮影(写真:大林組)
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木造高層ビルの建設現場の1~2階。2021年5月21日撮影。木造躯体の耐火被覆が進んでいた(写真:日経アーキテクチュア)
木造高層ビルの建設現場の1~2階。2021年5月21日撮影。木造躯体の耐火被覆が進んでいた(写真:日経アーキテクチュア)
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 20年3月に着工し、22年3月の竣工を予定するこのビルは、大林組の自社研修施設。道路に面した建物の南側に研修スペース、北側には宿泊室を備える。延べ面積は約3600m2で、最高高さは約44m。地下1階は鉄筋コンクリート(RC)造だが、地上部分は「純木造」だ。

 木材の総使用量は1945m3。そのうち構造体として1675m3、内装材として270m3を使用する。

施設の南側に研修スペースなどを、北側に宿泊室を配する(中央の断面図)。柱や梁、床は、左の断面図のように石こうボードで被覆する。ボードの枚数は耐火時間によって異なる。右の断面パースの手前には、内装に木を使った研修スペースやプロモーションスペースが見える(資料:大林組)
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施設の南側に研修スペースなどを、北側に宿泊室を配する(中央の断面図)。柱や梁、床は、左の断面図のように石こうボードで被覆する。ボードの枚数は耐火時間によって異なる。右の断面パースの手前には、内装に木を使った研修スペースやプロモーションスペースが見える(資料:大林組)
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施設の南側に研修スペースなどを、北側に宿泊室を配する(中央の断面図)。柱や梁、床は、左の断面図のように石こうボードで被覆する。ボードの枚数は耐火時間によって異なる。右の断面パースの手前には、内装に木を使った研修スペースやプロモーションスペースが見える(資料:大林組)
6階研修スペースの内観イメージ(資料:大林組)
6階研修スペースの内観イメージ(資料:大林組)
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宿泊室の内観イメージ(資料:大林組)
宿泊室の内観イメージ(資料:大林組)
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 このビルは、防火地域に立つ耐火建築物だ。大林組が開発した耐火木造部材「オメガウッド(耐火)」を柱と梁に採用した。LVL(単板積層材)の荷重支持部材を石こうボードで被覆し、燃えしろ層を木材で仕上げる。1~7階は2時間耐火、8階以上は1時間耐火として設計した。立地を考慮し、1階にはシェルター(山形市)からの技術供与によって開発した3時間耐火仕様の柱を特別に採用した。

 床や屋根、建物の東西面に設ける耐力壁には、CLT(直交集成板)を採用している。床は、重量を抑えつつ遮音等級Lr-55を実現した。CLTの上に設ける根太床の合板が板バネとして作用することで振動を低減する。

大林組が開発したCLT床の構成(資料:大林組)
大林組が開発したCLT床の構成(資料:大林組)
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