通販大手のジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)は2022年6月26日、グループが進めるスタジアムとその周辺施設で構成する街づくり「長崎スタジアムシティプロジェクト」の起工式を建設予定地である長崎市内で開催した。
会見したジャパネットホールディングスの高田旭人代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は、「スポーツとビジネスの両面から民間主導で地域創生モデルを確立する」と宣言した。22年7月に着工した。
地元・長崎からテレビ通販で全国のお茶の間に進出したジャパネットは、今ではサッカークラブ「V・ファーレン長崎」やバスケットボールチーム「長崎ヴェルカ」を有するスポーツビジネス企業でもある。19年にはスポーツ・地域創生事業を、通販に次ぐ第2のビジネスに育てる計画を掲げた。
その本拠地となる施設「長崎スタジアムシティ(仮称)」の建設に、約800億円を投じる。社運を賭けた大事業だ。24年9月の完成を予定している。長崎スタジアムシティの階数は地上14階建て、高さは約64mになる見込みだ。企画運営はグループ会社のリージョナルクリエーション長崎(長崎市)が担当する。
コロナ禍でも業績は好調で、21年12月期には連結売上高が過去最高の2506億円で、9年連続の増収を達成した。テレビ通販のカリスマ的存在だった父・高田明氏の跡を継いだ高田社長は、グループを成長軌道に乗せた。
長崎スタジアムシティプロジェクトはスタジアムだけでなく、アリーナやオフィス、商業施設、ホテルまで備える巨大な街づくりだ。これほど多くの異なる施設を一度に立ち上げるプロジェクトは、大手デベロッパーの事業でもなかなかない。
しかもジャパネットはV・ファーレン長崎や長崎ヴェルカのホームゲームやショップ、飲食店などの運営をグループのスタッフで賄う。地元に雇用を生み出すとともに、通販で培ったおもてなしを施設での接客に取り入れる。
高田社長は会見で、「長崎スタジアムシティを完全キャッシュレスの街にする」と構想を明かした。「当社が開発した、様々な決済手段に1台で対応できる端末は他のJリーグチームにも好評で、合計10チームで導入が決まっている」(高田社長)。ジャパネットはサポーターがV・ファーレン長崎のユニホームを着るだけで、専用レーンから非接触で入場できるサービスも開発済み。ゼロから立ち上げるスマートシティーでもある。
会見には高田社長だけでなく、施設の建設に参画する設計者と施工者のトップがそろって登壇するという珍しい光景も見られた。設計者は環境デザイン研究所・安井建築設計事務所共同企業体(JV)、施工者は竹中工務店(スタジアム棟、ホテル棟、商業棟)、戸田建設(アリーナ・サブアリーナ棟、オフィス棟)、松尾建設(駐車場棟)の3社である。建設現場では約2000人が働くことになるという。
長崎スタジアムシティは、長崎駅から徒歩10分ほどの距離に位置する。長崎市幸町の三菱重工業長崎造船所幸町工場跡地に建設する。敷地面積は約7万5000m2、建築面積は約4万3500m2、延べ面積は約19万3000m2と、まさに街そのものの規模だ。
ICTプロジェクトマネジメントはEYストラテジー・アンド・コンサルティング(東京・千代田)、コンストラクションマネジメントは三菱地所設計が担当している。
会見では、新しい長崎に向かって想いを1つにするためのスローガン「N team」も発表された。そしてN teamのクリエイティブプロデューサーとして長崎スタジアムシティプロジェクトのPRクリエイティブ監修を務める、歌手で俳優の福山雅治氏の就任も明らかになった。福山氏は長崎県出身で、N teamのコンセプトワークやディレクション、演出などを手掛ける。