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 北海道の南西部にある白老町で、日本におけるアイヌ文化復興などに関するナショナルセンター「民族共生象徴空間(愛称はウポポイ)」が2020年7月12日に開業した。政府が総事業費約200億円を投じたプロジェクトだ。

 ウポポイは、ポロト湖とポロト自然休養林に隣接する約10万m2の敷地内(中核区域)に位置する。国立博物館「国立アイヌ民族博物館」と、体験型フィールドミュージアム「国立民族共生公園」、体験交流ホール、体験学習館などで構成する。

 中核区域から約1.2km離れた、ポロト湖東側の太平洋を望む高台には慰霊施設も設けた。施設内では公用語としてアイヌ語も使われている。施設の愛称である「ウポポイ」とは、アイヌ語で、大勢で歌うことを意味する言葉だ。一般投票で決まった。

ポロト湖側から見た国立アイヌ民族博物館。複雑な屋根形状と高さを抑えたプロポーションで自然と融和させた(撮影:船戸 俊一)
ポロト湖側から見た国立アイヌ民族博物館。複雑な屋根形状と高さを抑えたプロポーションで自然と融和させた(撮影:船戸 俊一)
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 ウポポイの計画は07年に遡る。同年9月に国際連合総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」と、08年に衆参両院で採択された「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を受け、政府は内閣官房長官の下に「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」を設置した。

 政府は「民族共生の象徴となる空間」をアイヌ政策の主要政策として位置付け、12年に「民族共生の象徴となる空間」基本構想を作成。14年に基本方針を閣議決定し、20年東京五輪に合わせた開業を目指して博物館など「民族共生象徴空間」の企画がスタートした。

 全ての建物の企画・設計監修は北海道開発局営繕部が担当した。設計・意図伝達は、建物ごとに異なる。国立アイヌ民族博物館を担当したのは久米設計、体験交流ホールと慰霊施設はアトリエブンク・総合設備計画設計共同体、体験学習館やエントランス棟などはドーコンだ。主に公募型プロポーザル方式で決定した。

民族共生象徴空間(ウポポイ)の配置図(資料:文化庁)
民族共生象徴空間(ウポポイ)の配置図(資料:文化庁)
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 ウポポイの中心となる施設が、国立アイヌ民族博物館。幅約130m、高さ約20mの横長のファサードを持つ、水平基調の建物だ。延べ面積は約8618m2。外観は高さを抑えて周囲の自然環境に溶け込むように配慮した。

 エントランス側から見た短手方向の外観は、背後の山並みと調和するアウトラインになっている。壁面の意匠や各エレメントのポイントにアイヌ文様を採用したのも特徴だ。文様のデザイン監修はアイヌ服飾文様研究家・津田命子氏が担当した。

国立アイヌ民族博物館のエントランス周り。屋根のアウトラインは、背後の山の稜線(りょうせん)に調和するようにした(撮影:船戸 俊一)
国立アイヌ民族博物館のエントランス周り。屋根のアウトラインは、背後の山の稜線(りょうせん)に調和するようにした(撮影:船戸 俊一)
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国立アイヌ民族博物館のエントランス。入口周りの壁面はアイヌ文様が浮かび上がるメタルスクリーンで覆っている(撮影:船戸 俊一)
国立アイヌ民族博物館のエントランス。入口周りの壁面はアイヌ文様が浮かび上がるメタルスクリーンで覆っている(撮影:船戸 俊一)
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 1階はミュージアムショップ、カフェ、ライブラリー、シアターが入る。2階は収蔵庫と展示空間。基本展示室は「ことば」「世界」「くらし」「歴史」「しごと」「交流」の6つのテーマで構成し、伝統的なアイヌ文化から現代に息づくアイヌ文化まで、多様な内容を展示している。2階展示室の手前に配置したロビー空間には、国立民族共生公園とポロト湖を一望する横長の大開口を設けた。

1階エントランスホールのシアター。右手のドアから展示室に上がる(撮影:船戸 俊一)
1階エントランスホールのシアター。右手のドアから展示室に上がる(撮影:船戸 俊一)
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2階展示室にアプローチするエスカレーター(撮影:船戸 俊一)
2階展示室にアプローチするエスカレーター(撮影:船戸 俊一)
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2階ロビーからは公園とポロト湖が一望できる(撮影:船戸 俊一)
2階ロビーからは公園とポロト湖が一望できる(撮影:船戸 俊一)
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