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茅の復活を期待する新築棟

 一方、サイクリングセンターは新築で、スギ材のCLTを使用している。そして軒天には、柔らかい素材である茅を使っているのがもう1つの大きな特徴だ。蒜山地域の草原から採取した茅を用いている。ススキに代表される茅は現代建築ではほとんど使われず、茅職人は非常に少なくなっている。そんな中、真庭市にはまだ現役の茅職人がいたことで、今回の建築が可能になった。

 隈氏は「茅を復活させることは建築デザインの広がりだけでなく、環境問題の解決に大きな役割を果たす」と説明する。もっとも、茅を屋根に使うと10年に一度ほどの頻度でふきかえなければならない。そこでサイクリングセンターでは、軒天およびそのまま室内の天井につながるほとんど前例がない使い方をすることで、長く利用できるようにした。

 「軒天に茅を使った世界でもまれな建築になった」と、隈氏は誇らしげだ。式典で隈氏は何度も茅職人の名前を挙げ、称賛していた。

「サイクリングセンター」の建材には茅も使った(写真:GREENable HIRUZEN オープン記念式典)
「サイクリングセンター」の建材には茅も使った(写真:GREENable HIRUZEN オープン記念式典)
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 サイクリングセンターでは、自転車文化の発信や蒜山高原の自然や文化を生かした体験を提供する。

サイクリングツアーやハイキングを開催(写真:GREENable HIRUZEN オープン記念式典)
サイクリングツアーやハイキングを開催(写真:GREENable HIRUZEN オープン記念式典)
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 真庭市は、廃棄物として処理されてきた製材端材や林地残材を木質バイオマス発電所の燃料として利用するなど、これまで価値がなかった資源を生かして経済を循環させる「回る経済(Circular Economy)」の実現に取り組んできた。18年には、地方公共団体による持続可能な開発目標SDGsの達成に向けた取り組みを提案する「SDGs未来都市」に選定されている。

 この活動を発展させるため、人と自然環境の持続可能な開発の探求と、地域振興への思想や取り組みを表すコミュニティーブランドとして、真庭市は阪急阪神百貨店と共に「GREENable」ブランドを立ち上げた経緯がある。

風の葉の前に立つ太田市長と隈氏(写真:GREENable HIRUZEN オープン記念式典)
風の葉の前に立つ太田市長と隈氏(写真:GREENable HIRUZEN オープン記念式典)
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