全1883文字
PR

 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(以下ファイターズ、札幌市)とパナソニックは2022年7月20日、ファイターズが北海道北広島市で開発しているコミュニティー施設「北海道ボールパークFビレッジ」において、パートナーシップ契約を締結したと発表した。同日、両社の幹部が都内で会見し、協業の意図を語った。

ファイターズ スポーツ&エンターテイメントとパナソニックの幹部がそろって会見した(写真:日経クロステック)
ファイターズ スポーツ&エンターテイメントとパナソニックの幹部がそろって会見した(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 Fビレッジは、23年3月に開業する、プロ野球球団の北海道日本ハムファイターズの本拠地になる天然芝の新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド HOKKAIDO)」を核とする街のような巨大施設群(ボールパーク)だ。投資額は約600億円になる。

 その中で、「ファイターズが目指す新しいスポーツ・ライブエンターテインメントを、パナソニックの製品や演出ノウハウを取り入れて実現していく」(ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長の前沢賢氏)。

ファイターズがパナソニックとパートナーシップを結んだ狙いは3つある。プレー環境の充実と来訪者体験の向上、統合システムの構築だ(写真:日経クロステック)
ファイターズがパナソニックとパートナーシップを結んだ狙いは3つある。プレー環境の充実と来訪者体験の向上、統合システムの構築だ(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 Fビレッジは野球場だけでなく、宿泊施設や商業施設、農業学習施設、認定こども園、レジデンスなどを内包する。今回のパートナーシップ契約で、ファイターズはパナソニックの技術力を用いて新しい野球観戦体験や地域生活を提供する。

 最初の取り組みは、新球場内の照明環境の整備だ。パナソニック製の競技向けLED照明を合計354台導入する。Fビレッジの設計や施工に関わる大林組などと連携して、照明の設備設計と施工を進めている。新球場の竣工は23年1月を予定している。収容人数は約3万5000人だ。

固定屋根側に設置したLED投光器を見上げる(写真:パナソニック)
固定屋根側に設置したLED投光器を見上げる(写真:パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]

 野球のプレーに最適な照明設計で、観客と選手、施設運営のそれぞれにメリットがある光環境を整える必要がある。そこで2kW相当のLED投光器を226台、1kW相当のLED投光器を128台と、2種類の投光器を交ぜて設置した。合計354台の照明を個別制御することでまぶしさを抑えながら、フィールド上の光がウエーブ状に動くといった照明演出を可能にする。

LED投光器の向きがバラバラなのは、照射方向を分散させて光の重なりを減らすためだ。向きをそろえた方が見た目は美しいが光の「塊」ができやすくなり、まぶしさが増大する(写真:パナソニック)
LED投光器の向きがバラバラなのは、照射方向を分散させて光の重なりを減らすためだ。向きをそろえた方が見た目は美しいが光の「塊」ができやすくなり、まぶしさが増大する(写真:パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]
設置したLED投光器。地震発生時の落下や破損の事前検証は必須だ(写真:パナソニック)
設置したLED投光器。地震発生時の落下や破損の事前検証は必須だ(写真:パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]
導入する2種類のLED投光器。左が2kW相当、右が1kW相当。21年秋にパナソニックが発売した新製品だ。LEDは省エネで長寿命なだけでなく、瞬時に点灯するので光の演出にも向く。会見では実際に点灯してみせた(写真:日経クロステック)
導入する2種類のLED投光器。左が2kW相当、右が1kW相当。21年秋にパナソニックが発売した新製品だ。LEDは省エネで長寿命なだけでなく、瞬時に点灯するので光の演出にも向く。会見では実際に点灯してみせた(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 会見した、パナソニックエレクトリックワークス社マーケティング本部北海道電材営業部電材営業開発部の馬杉道裕担当部長は、「開閉式屋根を持ち、グラウンドの左右に大型ビジョンを設置する新球場は通常のスタジアムと違い、グラウンドを360度取り囲むような照明配置ができない」と打ち明ける。

 そこでホームベース側(固定屋根側)と外野側(ガラスウオール側)の2方向にだけ照明器具を取り付ける、変わった配置にしている。固定屋根側からは主にグラウンドの外野を、ガラスウオール側からは内野を照らす。

 「照明器具の一部がグラウンド内に入り込んでいるのも珍しい。光源が選手に近くなるので、まぶしくならない工夫が必要になる」(馬杉担当部長)と、新球場の特殊性を語る。まぶしさの原因になる光の重なりを減らすため、挟角配光のための技術を開発した。

 他にも、屋根が開いているときと閉まっているときでは、光の反射の仕方が変わる。スタジアム全体が左右非対称の形をしている、という環境下でもある。

会見では、新球場内の照明配置が特殊であることを詳しく説明した(写真:日経クロステック)
会見では、新球場内の照明配置が特殊であることを詳しく説明した(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
LED投光器の配置図。赤い線が照明の設置位置(資料:パナソニック)
LED投光器の配置図。赤い線が照明の設置位置(資料:パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]
22年3月時点の建設現場。奥がホームベース側(固定屋根側)で、手前が外野側(ガラスウオール側)。奥側から屋根がスライドしてきて閉まる。新球場はセンター方向がガラス張りになっており、球場内から外が見える斬新なつくりになっている。22年6月末時点では施工の進捗が約86%まで来ている(写真:大林組)
22年3月時点の建設現場。奥がホームベース側(固定屋根側)で、手前が外野側(ガラスウオール側)。奥側から屋根がスライドしてきて閉まる。新球場はセンター方向がガラス張りになっており、球場内から外が見える斬新なつくりになっている。22年6月末時点では施工の進捗が約86%まで来ている(写真:大林組)
[画像のクリックで拡大表示]

 パナソニックは国立競技場や阪神甲子園球場など国内の様々なアリーナやスタジアムで、競技照明の導入実績がある。VR(仮想現実)による照明シミュレーションを駆使して、まぶしさを感じにくい照明環境を用意する。野球の場合は選手が見上げたときに、光でボールが見えなくならないように設計する必要がある。それを照明シミュレーションで施工前に検証しておく。

VRで見たホームベース側の照明配置。白い線は光の照射イメージ(資料:パナソニック)
VRで見たホームベース側の照明配置。白い線は光の照射イメージ(資料:パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]