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 軍艦島で崩壊へのカウントダウンが始まった――。2020年3月、世界文化遺産・軍艦島(正式名:端島)にある日本最古の鉄筋コンクリート(RC)造アパート「30号棟」の一部が突然崩落した。その後も崩落箇所は拡大し、20年6月には新たに別の箇所が崩落した。

 軍艦島は、たびたび襲来する台風と加速する老朽化に、どのように立ち向かっていけばいいのか。我々は軍艦島をどのように守っていけばいいだろうか。本稿では前後編に分けて、崩壊が進む軍艦島の現状を報告するとともに、筆者が取り組んできた「軍艦島3Dプロジェクト」ならびに軍艦島を未来へ引き継ぐための保存の在り方について述べる。

波をかぶる軍艦島(写真:柿田 清英)
波をかぶる軍艦島(写真:柿田 清英)
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 軍艦島は、長崎港から南西に約17.5kmの外洋に位置する。島は南北に細長い形で、大きさは南北約480m、東西約160mである。かつてこの島は海底炭鉱により栄え、最盛期の1960年代には人口が約5300人となり、人口密度は世界一となった。その後、74年の閉山に伴い無人島になって現在に至る。

 2015年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の1つとして登録された。軍艦島では上陸観光ツアーが行われ、17年度には約29万人が上陸。文化財としてだけなく、観光資源としても注目されている。

 軍艦島は、もともと岩礁から成る小さな島であったが、島の繁栄とともにその周囲を6回にわたって埋め立てる工事が行われ、島と護岸が拡張されてきた。現在の姿が形成されたのは1931年である。島の中央部の南北に延びる山は埋め立て前の岩礁で、その東側と南側には炭鉱関連施設、北側と西側および山頂には居住施設がある。

 島の周囲には長さ約1.2km、高さ10m以上の城壁のような護岸が構築されている。それでも、大時化(しけ)の際には、護岸をはるかに超える高潮に襲われ、波は7階建ての建物すら乗り越えるという。