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 2025年日本国際博覧会協会は2022年8月8日、大阪・関西万博の会場に設ける「休憩所」「ギャラリー」「展示施設」「ポップアップステージ」「サテライトスタジオ」「トイレ」の合計20施設を設計する若手建築家20組を発表した。23年度から始まる会場建設に向け、各組が担当する1施設の設計を進める。23年2月下旬までに基本設計を完了しなければならない。

 20組は公募型のプロポーザル方式で選ばれた。応募があった256事業者からの提案について、1次審査(書類審査)と2次審査(ヒアリング審査)を実施。その中から20組、合計23人を決定した。

選ばれた若手建築家20組、合計23人と評価委員(中央前列の3人)、そして万博の公式キャラクター「ミャクミャク」(左)(写真:2025年日本国際博覧会協会)
選ばれた若手建築家20組、合計23人と評価委員(中央前列の3人)、そして万博の公式キャラクター「ミャクミャク」(左)(写真:2025年日本国際博覧会協会)
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優秀提案者(選出者)を発表する会場デザインプロデューサーの藤本壮介氏(写真:2025年日本国際博覧会協会)
優秀提案者(選出者)を発表する会場デザインプロデューサーの藤本壮介氏(写真:2025年日本国際博覧会協会)
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 公募参加資格の1つは1級建築士事務所で、「事務所の開設者は1級建築士で、かつ1980年1月1日以降生まれの人とする」という条件だった。選ばれた20組を見ると、30代が中心だ。

 20組が担当する施設は、協会側が改めて指定した。必ずしも本人の希望通りではない。選定では20棟のうち、協会が指定した3棟「休憩所1」「サテライトスタジオ(東)」「トイレ6」から1棟を選んで提案した。選ばれた20組の中にはそれ以外の施設を割り当てられた人が複数おり、改めて設計を始めることになる。

 以下に、20組が担当する万博施設と、所属する建築設計事務所、そして優秀提案者(選出者)の氏名を記す。

休憩所1大西麻貴+百田有希/o+h大西 麻貴
休憩所2工藤浩平建築設計事務所工藤 浩平
休憩所3山田紗子建築設計事務所山田 紗子
休憩所4Schenk Hattori+Niimori Jamison服部 大祐、新森 雄大
ギャラリーteco金野 千恵
展示施設KOMPAS JAPAN小室 舞
ポップアップステージ(東)KIRI ARCHITECTS桐 圭佑
ポップアップステージ(西)三井嶺建築設計事務所三井 嶺
ポップアップステージ(南)萬代基介建築設計事務所萬代 基介
ポップアップステージ(北)axonometric佐々木 慧
サテライトスタジオ(東)ナノメートルアーキテクチャー野中 あつみ
サテライトスタジオ(西)佐藤研吾建築設計事務所佐藤 研吾
トイレ1GROUP棗田 久美子
トイレ2Studio mikke小林 広美
トイレ3小俣裕亮建築設計事務所小俣 裕亮
トイレ4浜田晶則建築設計事務所(AHA)浜田 晶則
トイレ5米澤隆建築設計事務所米澤 隆
トイレ6KUMA&ELSA隈 翔平
トイレ7HIGASHIYAMA STUDIO+farm+NOD鈴木 淳平、村部 塁、溝端 友輔
トイレ8斎藤信吾建築設計事務所斎藤 信吾
2025年日本国際博覧会協会が22年8月8日に発表した資料を基に、日経クロステックが作成
20施設の配置図。会場の目立つ場所に立つ施設が多い(資料:2025年日本国際博覧会協会)
20施設の配置図。会場の目立つ場所に立つ施設が多い(資料:2025年日本国際博覧会協会)
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 選出メンバーは建築業界で顔と名前を既に知られた実力者がそろった感じがする。応募申込期間が1カ月弱、1次審査書類の提出まで2カ月半ほどしかなかった短い期間に、素早く行動に移した瞬発力と発想力がある設計者ばかりである。

 業界では若手かもしれないが、働き盛りの世代である。30代後半が多く、決して「新人」ではない。

 例えば、大西麻貴氏は22年7月に、23年開催の「第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」日本館展示で、キュレーターを務めることが決まったばかりだ。他にも、国内外で大きなプロジェクトに参画した経験者が何人もいる。使用する予定の素材や技術も、提案時点では多種多様である。

 若手が設計する施設は小規模なものが多いが、だからといって簡単ではない。むしろ、限られた敷地に必要な要素を盛り込んだうえでいかに個性を出すか、難しいはずだ。

 万博という特殊要因もある。若手には大胆で未来志向の発想を期待する向きがある一方で、世界中から訪れる来場者が快適に使える利便性が高い施設でなければならない。利用者が多いトイレは、その典型だろう。海外の人から、日本は「トイレ先進国」とみられている可能性が高い。その期待にも応えたいところだ。

 各施設は仮設なので約半年間の会期を持ちこたえられればよいが、施設の配置図を見ると、多くが会場のかなり目立つ場所に立つ。限られた予算を安全性はもちろんのこと、耐久性にどこまで割き、どこで建築としての斬新さを打ち出すか、悩ましいところである。

 しかも今回の万博の重要な建築テーマになっている「循環」を意識する必要がある。閉幕後の再利用まで念頭に置いた設計が求められる。既に発表されている施設やパビリオンの中には、木材を使うところが多く見受けられる。世界最大級の木造建築物になる予定の大屋根(リング)をはじめ、今回は「木の万博」になりそうなだけに、若手がその流れに乗るか、あえて違いを出すかにも注目したい。