ベネッセホールディングスは2021年11月4日、香川県直島町で2つの新しいアート施設を22年3月に開館すると発表した。1つは、瀬戸内海に浮かぶ直島で安藤忠雄氏が設計する9カ所目の建築「ヴァレーギャラリー」。もう1つは、現代美術家の杉本博司氏と建築家の榊田倫之氏による新素材研究所(新素研)が、杉本氏の既存の作品展示空間を改修・拡張する「杉本博司ギャラリー 時の回廊」だ。
ベネッセは衰退する直島をアートの力で再生した。22年は、美術館とホテルが一体になった「ベネッセハウス」がオープンして30周年の記念の年に当たる。同施設は、瀬戸内海の島々で展開されているアート活動「ベネッセアートサイト直島」の中核となる。
さらに22年には、直島を中心とする国内最大級のアートイベント「瀬戸内国際芸術祭2022」が開催される予定。2つの新施設は、その目玉になりそうだ。
ヴァレーギャラリーは、祠(ほこら)をイメージした小さな半屋外の建物と、周辺の屋外空間を一体で整備する施設だ。建物の延べ面積は96.25m2。設計は安藤忠雄建築研究所、施工は鹿島が担当した。
場所は、安藤氏が直島で設計したベネッセハウスと「地中美術館」の中間にあり、同じく安藤氏が設計した「李禹煥(リー・ウーファン)美術館」の向かい側にある山間の谷筋に位置する。春先には山の斜面がヤマツツジに覆われる。エリア全体を回遊しながら、直島のランドスケープを楽しんでもらう。鑑賞料金は「ベネッセハウス ミュージアム」の入館料に含まれる。
建物は地形に応じて30度に開いた台形の平面計画になっている。コンクリートの壁による2重構造で、厚さ12mmの鉄板で屋根を覆う。鉄板にはシフトや切り込みなど幾何学的な形状の開口を設け、内部に雨や風、光をそのまま取り入れる。
建物の屋内外には、草間彌生氏の作品「ナルシスの庭」を展示する。直島といえば、草間氏の黄色い「南瓜(かぼちゃ)」を連想する人が多いだろう(現在は台風の被害で破損したため修復中)。
06年からこの地に恒久展示されてきた小沢剛氏の作品「スラグブッダ88―豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏」も一部改変し、展示を継続する。