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 RC(鉄筋コンクリート)の柱とCLT(直交集成材)を組み合わせた、全く新しい工法を採用したオフィスビルが名古屋に誕生した。自動車や航空・宇宙関連などの製品を開発するタマディック(東京・新宿)の東海エリアにおける新しい事業拠点「タマディック名古屋ビル」だ。

 地下1階・地上8階建てで、2021年11月24日に竣工。本社管理部門や航空・宇宙、FA(ファクトリーオートメーション)・エレクトロニクスの各事業部の一部が名古屋ビルに移転し、22年1月から業務を開始する。

2021年11月24日に竣工した「タマディック名古屋ビル」。木の柱が並んでいるように見える(写真:日経クロステック)
2021年11月24日に竣工した「タマディック名古屋ビル」。木の柱が並んでいるように見える(写真:日経クロステック)
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 まるで木造のように見えるオフィスビルを設計したのは、坂茂建築設計(東京・世田谷)である。実際はコンクリートとCLT板を融合した世界初の構造をしている。RCの柱をCLT板で覆っているのだ。

夜のタマディック名古屋ビル。CLT板で覆われた外柱がよく見える(写真:タマディック)
夜のタマディック名古屋ビル。CLT板で覆われた外柱がよく見える(写真:タマディック)
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 そういうと、単に仕上げ材としてCLTを使っただけに思えるかもしれない。しかし、それは違う。CLTに大きく3つの役割を持たせた点が斬新で画期的だ。

 1つめは柱のコンクリートを打設する際の「型枠」としてCLT板を使うこと。2つめは、コンクリートが固まると、型枠のCLTがそのまま柱表面の「仕上げ材」になり、木に覆われた温かみがある執務空間を創出できること。そして3つめは、地震のときにしなやかな木材のCLTとRCを組み合わせた柱が水平力に抵抗することだ。

 坂茂建築設計の坂茂代表取締役は、「本来なら木造で高層ビルをつくりたいところだが、敷地は名古屋市の防火地域に当たり、耐火建築物しか認められない。そこでCLT板で『ロ』の字形の断面をつくり、それを型枠にしてコンクリートを打設し、RCを内蔵したハイブリッド断面とした。RC断面が建物を支えるとともに、火災時には耐火性能があるRC構造が建物の崩壊を防ぐ」と説明する。

竣工式典で講演した、坂茂建築設計の坂茂代表取締役(写真:日経クロステック)
竣工式典で講演した、坂茂建築設計の坂茂代表取締役(写真:日経クロステック)
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坂氏が設計した海外の木造高層ビルと、今回のオフィスビルの構造の違いを説明しているところ。場所は8階の多目的ホール(写真:日経クロステック)
坂氏が設計した海外の木造高層ビルと、今回のオフィスビルの構造の違いを説明しているところ。場所は8階の多目的ホール(写真:日経クロステック)
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CLT板がRC柱の型枠になり、仕上げ材にもなる(資料:坂茂建築設計)
CLT板がRC柱の型枠になり、仕上げ材にもなる(資料:坂茂建築設計)
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施工中に、柱の鉄筋にCLT板をかぶせているところ。施工者は大林組(写真:坂茂建築設計)
施工中に、柱の鉄筋にCLT板をかぶせているところ。施工者は大林組(写真:坂茂建築設計)
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 坂氏は今回の構造を「木質免震構造」と呼んでいる。正確には、RC造、一部鉄骨(S)造、木造、SRC造(免震構造)となる。構造設計は、陶器浩一+飯島建築事務所+高橋俊也建築構造研究所が協力している。施工者は大林組だ。

 坂茂建築設計では実物大の柱の試験体を製作し、性能確認試験を実施している。その結果、一般的な配筋だけのRC断面に比べて、断面形状やCLT板厚によって、最大耐力が約3.8~5倍、剛性が約1.3~1.6倍高まることが分かった。「非常に優れた構造性能であることを確認できている」(坂氏)。しなやかで頑丈ということだ。

 各階の床も、CLT板を型枠としてコンクリートを打設する構造としている。柱と同じく、通常はRC断面で床を支えるが、RC+CLTとすることで床の振動やたわみを抑える。強度や剛性、遮音性、耐火性が高い床構造になっているという。床のCLTは120mmで、各階共通だ。