日本財団と大阪大学は2021年12月16日、同年9月に立ち上げた「日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクト」の一環として、感染症に関する研究棟のコンセプトデザインを発表した。阪大内に新築する。デザイン監修は建築家の安藤忠雄氏が担当する。
同日、阪大の西尾章治郎総長と日本財団の笹川陽平会長、そして安藤氏が会見。研究棟のイメージや模型を初披露した。
安藤氏は「宇宙船地球号」をイメージしたという楕円形の平面の建物を提案した。感染症は世界を巻き込む全人類の問題であり、地域格差や差別なく多角的に解決する必要があると考えた。「(中心が1つではなく2つある)楕円形の宇宙船、地球号を建築デザインに反映した。国内外にアピールするためには、インパクトがある建物にしなければならない。世界中の研究者がここに集まり、感染症の課題解決に取り組んでほしい」とエールを送った。
研究棟は地上9階建てで、高さは約45mを想定している。延べ面積は約1万6000m2。着工は23年9月ごろを予定し、25年2月の竣工を目指す。なお、設計者と施工者は未定だ。
建築費は約80億円を想定する。日本財団は阪大に対し、感染症対策プロジェクトで今後10年間に、約230億円規模の助成を計画している。
日本財団は過去40年以上にわたり、ハンセン病を世界からなくす活動を笹川会長が先頭に立って行ってきた実績がある。「感染症問題とは深い縁がある。医学分野で世界的に知られる阪大とプロジェクトを進められること、そして安藤氏に研究棟をデザインしていただけることに胸が高鳴っている」と、笹川会長は話す。
安藤氏は、感染症の基礎研究と教育に重点を置くという日本財団と阪大のプロジェクトに共感。この場所を「世界中からやって来る研究者の成果発表の場にし、交流基地になることを期待する」(安藤氏)と述べた。低層部に設けるガラス張りの部屋は、研究内容を国内外に発表するための情報発信拠点と位置付けている。