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 モバイルの世界では、スマートフォンが登場する前はPDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)が使われていた。PDAが登場した1990年代初め、日本ではシャープの「ザウルス(Zaurus)」を代表とする電子手帳が主流だった。そのザウルスも、進化して後にPDAに分類されるようになる。

 そもそもPDAは、コンピューターと同期して予定表やアドレス帳、メモなどの日常的な個人データを持ち歩ける機器として登場した。PDA初期の代表的な機種といえば、米ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)が1994年に発売した「HP200LX」、米パーム(Palm)が1996年に発売した「PalmPilot」が挙げられるだろう。

 1997年になると、カシオ計算機の「カシオペア A-51」、NECのモバイルギア「MC-CS11」など、OSに米マイクロソフト(Microsoft)のWindows CEを搭載したPDAが続々とリリースされる。

PowerBookに飛びつき、さらに軽いデバイスを望むユーザー

 話はHP200LXが出る3年前、1991年に遡る。

 この頃、米アップル(Apple)のユーザーは「持ち運べるMac」の登場に沸いていた。ノート型の「PowerBook」シリーズがリリースされたのだ。持ち歩けるアップル製品を熱望していたユーザーは待ってましたとばかりに飛びついた。

 だが当時のPowerBookは、現在のモバイルノートPCと比べればまだまだ重かった。筆者は1991年に発売された「PowerBook 100」が当時の最軽量モデルだったと記憶しているが、この機種の仕様表を見直してみたら5.1ポンド(約2.3キロ)あった。アップルユーザーはポケットに入れて持ち歩けるくらい軽い、モバイルシーンで使える製品を熱望していたのだ。

 そんな中、1992年にアップルは満を持して新しいモバイルデバイスを発表し、翌1993年に発売した。それが「Newton」だった。

 余談だが、筆者が最初に購入したPowerBookは、1993年に発売された「PowerBook 145B」だった。この機種はモノクロ画面だったこともあり、ユーティリティーソフトでハードディスクを停止させることでバッテリー駆動時間を大幅に延ばすことができた。ただし重量が6.8ポンド(約3.1キロ)あり、持ち歩くのは結構大変だった。

NewtonこそがPDAの元祖

 PDAというキーワードは、アップルがNewtonを発表したときに使ったのが最初とされている。Newtonの仕様や搭載機能を見ると、明らかに電子手帳とは違うことが分かる。

 NewtonのOSである「Newton OS」は、アップルらしい遊び心にあふれているものだった。付属のペンで手書きした文字を認識し、変換できた。その文字変換は、当時のPalmPilotやザウルスが画面下部の入力欄に入力する必要があったのに対し、Newtonは画面上の好きな場所に文字を書けば認識するという洗練された手法を採用していた。入力内容の消去は、「スクラブ」という画面上にジグザグのマークを書くことで実行できた。

 Newton OSは文字認識の他に、入力した情報を探す「アシスト(Assist)」、情報を他のデバイスに送信する「ビーム(Beam)」などの機能を搭載していた。

米アップルの「Newton MesssagePad 130」
米アップルの「Newton MesssagePad 130」
(撮影:伊藤浩一、以下同じ)
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