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 そもそもQV-10の商品企画は、ビジュアルコミュニケーションに使えるカメラ付きポケット液晶テレビとしてスタートした。だがテレビチューナーの搭載で、ビジュアルコミュニケーションというコンセプトがぼけてしまった。テレビ機能を除いたほうがコンセプトが明確になると判断。カメラ機能と、撮影した写真のPCへの入力に特化することになった。

QV-10の企画書の一部。ビジュアルコミュニケーションの例が示されている
QV-10の企画書の一部。ビジュアルコミュニケーションの例が示されている
(出所:カシオ計算機)
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やりたいことは全部スマホが実現

 撮影した写真を使ってコミュニケーションを図る、というQV-10のコンセプトを聞いて「そっくりそのまま、スマホでできることではないか」と感じた人もいるだろう。

 カシオは2002年に、薄型のデジタルカメラ「EXILIM EX-S1」を出した。この機種が、今スマホでできていることを目指した原点だったという。ポケットに入る厚さ約11ミリを実現し、さっと取りだして撮影する。つまり“日常撮影”に特化していた。

 だがその後登場してくるスマホは通信機能も搭載しているので、写真を共有するのも早い。中山氏は、「スマホは我々がやりたかったことを単体で実現している。取って代わられた印象が強い」と振り返る。

カードサイズの薄型デジタルカメラ「EXILIM EX-S1」
カードサイズの薄型デジタルカメラ「EXILIM EX-S1」
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 2018年、カシオはコンデジの生産終了を発表した。その2~3年前から「TR」という自撮りに特化したコンデジが中国で大ヒットして利益を生んでいたが、それも落ち着いて撤退を決断するに至った。スマホの台頭がやはり影響したという。

 中山氏はこの1年間ほど、コンデジで培った技術を使った、新しいビジネスモデルを進めている。例えば、顔をきれいに撮るソフトウエアアルゴリズムを、全く異なる機器向けに提供するなどだ。

 2019年4月25日には、皮膚科医向けカメラを発表した。カシオの技術と皮膚科医の知見をいかした製品。病変の色や構造を確認するための接写と、病変位置確認用の患部周辺を含めた全体撮影が可能だ。

 カシオはコンデジを作らなくなったが、長年培った技術は姿を変えながら受け継がれている。