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 「期待に程遠い結果だった」「本当の意味での客の価値を捉えきれていなかった」――。日経 xTECHの取材に応じた富士通の田中達也社長は社長就任後の3年半を振り返るなかで何度となく反省の弁を口にした。

富士通の田中達也社長
富士通の田中達也社長
2018年12月にインタビューに応じた(写真:陶山 勉)
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 「自分が持っているものから考えて、動きがコンサバティブ(保守的)になってしまう大企業病だ」。取り組んできた事業強化策がうまく進まなかった事実を認め、その理由をこう分析した。

 田中社長は営業出身で中国への赴任経験が長い。アジア地域の責任者だった2015年1月に社長に指名され、同年6月の株主総会を経て就任した。

 「海外事業の拡大こそが私に期待されている」。社長就任以来、常々こう語り、欧州や米国、アジアなどの海外拠点を精力的に訪問。現場の課題を拾い上げたり現地の主要顧客との関係を深めたりしてきた。

 社長就任の4カ月後、2015年10月に田中社長は経営方針の転換を発表した。システム構築やソフトウエア、ITインフラ機器を手掛ける「テクノロジーソリューション」事業に経営資源を集中する内容だ。

 それまでは携帯電話やパソコンの「ユビキタスソリューション」事業、電子部品や半導体の「デバイスソリューション」事業を含む3本柱で進めてきたが、ユビキタスとデバイスの各種事業は外部資本の導入などで独立させる方針に変えた。

目標の先送りを決断

 方針の転換により「営業利益率10%以上」「海外売上比率50%以上」などを目指すと宣言した。達成時期は「社長在任期間中」と話すにとどめたが、社内外で2020年度の目標と認識されてきた。富士通の社長在任期間の目安が5年間とされる慣例からだ。

 しかし、改革は思うように進まなかった。経営方針の公表からちょうど3年後の2018年10月、田中社長は営業利益率10%の達成を目指す時期を2022年度に先送りすると発表。併せて海外売上比率50%の目標を取り下げた。理由について「まずは強固な収益体質の確立を優先するため」と語った。

富士通の10年間の業績の推移
富士通の10年間の業績の推移
構造改革は道半ば、利益率は上昇せず。注:会計基準は2009~2013年度が日本基準、2014年度以降がIFRS。2018年度は第3四半期終了時点での見通し
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 非中核事業と位置付けたカーナビや携帯電話、パソコン、インターネット接続サービス、半導体製造などの事業を担当する子会社の分離については、当初方針に沿って進めてきた。「これまで一緒にやってきた仲間なので、その後の調達や協業を考えて相手先を慎重に選んだ。そのため想定よりも時間はかかったが、1つのヤマは越えた」と田中社長は振り返る。