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著名なセキュリティーリサーチャーのpiyokango氏が注目のシステムトラブルをピックアップ。今週の注目ネタは……。

 今回は3件のトピックを紹介する。気象庁の気象データの配信障害と、三重県内自治体のWebサイトの障害、トレンドマイクロのランサムウエアへの注意喚起である。

バックアップへの切り替えに失敗(2月5日)

 気象庁は2021年1月26日に発生した気象データの配信障害に関する検証結果を発表した。障害が生じた原因を3つ挙げ、それぞれの再発防止策を明らかにした。

気象データの配信障害について
気象データの配信障害について
出所:気象庁

 障害は気象庁の気象情報伝送処理システム(アデス)で1月26日午後4時41分に発生した。障害により東日本にある自治体や気象情報サービス事業者に気象データを提供できなくなった。また気象庁のWebサイトに掲載する一部の情報の更新が遅れたり、同日午後5時の天気や雪に関する情報が欠落したりした。これらの障害がすべて復旧したのは1月27日午前3時35分だった。

 障害原因の1つめはアデスの東日本にあるネットワーク機器における設定ミス。これが障害を引き起こした直接の原因だった。この原因により観測・予報・地震火山などの各種情報を作成する庁内システムや東京にある気象業務支援センターに、気象データを送信できなくなった。

バックアップへの切り替えができなかったときの状況
バックアップへの切り替えができなかったときの状況
出所:気象庁
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 2つめはバックアップへの切り替えができなかったこと。アデスのシステムは東日本と西日本に分かれ、一方で障害が発生したときはもう一方がバックアップとして稼働することになっている。ところが東日本で障害が発生した後、西日本のシステムが処理を同日午後5時18分までに引き継いだものの、設定ミスによりその出力先である東京の気象業務支援センターに接続できなかった。

 最後の3つめは東日本のアデスが同日午後6時29分に復旧した際、地震火山関連のシステムから東日本のアデスに情報を流す必要があったが、その作業が実施されなかったこと。これにより、東日本の利用者に対して地震火山関連の情報が配信されなくなった。

地震火山関連の情報が配信されなかったときの状況
地震火山関連の情報が配信されなかったときの状況
出所:気象庁
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 気象庁はそれぞれの再発防止策として、次を実施した。

 1つめの原因については、ネットワーク設定の作業者2人の仕事量が多かったことが設定ミスの見落としにつながったとして、作業を8人体制に変えた。

 2つめの原因については障害発生時の切り替え作業を再確認し見直すとした。また全体の状況を管理する部署の体制を強化するなどを挙げた。

 3つめについては2つめの再発防止策に挙げた全体の状況を監視する部署の強化に加え、地震火山関連の情報の流れを再確認し関係者に周知徹底したとした。

https://www.jma.go.jp/jma/press/2102/05b/20210126_shougai3.pdf