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 第1の利点について、Gogoroは「6秒で電池を交換できる」とうたう。従来ならば30分以上はかかっていた充電待ちの時間は数百分の一となり、車両の稼働率を大幅に高められる。

 技術の進歩に合わせて最新の電池を採用できることも利点の1つである。電池の技術は日進月歩だ。GogoroのEVスクーターは、パナソニック製の円筒型電池セルを数百個組み合わせて電池パックとして仕上げている。パナソニックは、円筒型セルのエネルギー密度を約2倍に高める目標を持つ。寸法の同じ新しい電池パックと載せ替えれば、大掛かりな改修を必要とせずに航続距離を2倍にできる可能性がある。

交換PFの陣取り合戦が開始

 3つめの利点は、電池を多用途で使い回してコストを下げやすいことである。この特徴に注目するのがホンダだ。同社は2018年11月30日から、排気量125ccクラスの電池交換式EVスクーター「PCX ELECTRIC」のリース販売を開始し、企業や官公庁を中心に提供している。搭載する電池パックを、ゆくゆくは小型4輪EVや家庭用の電源として使う構想を持つ(図3)。

図3 ホンダは交換式の電池を多用途に使い回す (撮影:日経 xTECH、中央下のみホンダ提供)
図3 ホンダは交換式の電池を多用途に使い回す (撮影:日経 xTECH、中央下のみホンダ提供)
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 電池の購入費用をシェアの運営事業者が負担したり、多用途で使い回したりする仕組みが整えば、車両の価格を下げやすい。ホンダが投入したPCX ELECTRICの場合、電池パック1個当たりの価格は5~8万円とみられる。2個搭載するため、車両1台当たりは10~16万円だ。電池を含む車両の販売価格は70~80万円を想定するため、消費者の電池分の負担が減れば車両価格は20%弱下げられることになる。

 共通の電池パックを多用途で使うホンダの戦略は理にかなっている。ただし、電池交換のプラットフォーム(PF)のデファクトスタンダード(事実上の標準)を狙うのはホンダだけではない。各社が独自の規格を乱立させれば、利用者にとっては使いにくい仕組みとなってしまう。

 先行するGogoroは、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアの店頭に交換ステーションを構えることで他の規格の振り落としを図る。限られた設置空間を奪い合う “陣取り合戦”を有利に進める。

 追いかけるホンダも、電池シェアの事業化には「(コンビニなどの)パートナーと議論を進める必要がある」(ホンダ事業企画課課長の船瀬光晴氏)とし、応戦する構えだ。まずは、東南アジアのフィリピンやインドネシア、そして日本で実証実験を進めながら、「電池シェアの運営事業者になるべきか検証していく」(同氏)。