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 PCX ELECTRICの車格では電池パックを2個まで載せられるが、小さいスーパーカブでは1個が限度となる。これでは「最低限必要な航続距離を確保できない」(三ツ川氏)。PCX ELECTRICにおいても電池パックの大きさはネックだ。2個の電池パックに座席下の積載空間の大部分を割いている。スクータータイプの大きな利点である積載性は失われ、ヘルメットすら入らない(図4)。

図4 PCX ELECTRICの積載空間は写真赤丸のスペースのみ(撮影:日経 xTECH)
図4 PCX ELECTRICの積載空間は写真赤丸のスペースのみ(撮影:日経 xTECH)
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 電池技術の進歩によって目標とするスーパーカブへの適用が見えてくる。ホンダはPCX ELECTRICで、パナソニックや韓国サムスン(Samsung)グループ、同LGグループから電池セルの調達を検討し、開発において議論を交わしやすい日系のパナソニックを選んだ。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の調査によれば、パナソニックが米テスラ(Tesla)に供給する「18650」セルのエネルギー密度は243Wh/kg。今後、円筒型で約2倍のエネルギー密度を目指すとし、1個の電池パックでも十分な航続距離を確保できる可能性が出てくる(関連記事:パナソニックのEV用LIBセル、円筒形で約2倍、角型で3倍強を目指す)。

 電池交換サービスのセオリーは、早い段階で電池パックを規格化して適用車種を増やしていくことだ。難しいのは、一度規格化した電池パックの形状や寸法、交換ステーションは簡単には変えられないこと。電池パックの大きさに縛られて、「(部品配置など)車両の設計自由度は無くなっていく」(ドリームインキュベータでシニアマネジャーの田代雅明氏)という。本格的な規格化と量産のタイミングを見誤れば、車両メーカーは自分の首を絞めることになりかねない。

 スーパーカブへの適用を目標とするホンダは、電池の規格を変更する可能性を残す。PCX ELECTRICで車両と電池パックを合わせたリースとして売り出したのが証拠だ。車両を売り切った場合に比べて、電池の規格を総入れ替えしやすい。

ヤマハ発はベンチャーの手を借りる

 ライバルのヤマハ発も電池交換式EVスクーターの車両開発を進めている。電池パックや交換ステーションは自社で手掛けず、2011年設立の台湾ベンチャー・ゴゴロ(Gogoro)の協力を得て実現する構えだ。まずは2019年夏に台湾での車両発売を目指す。車格は未定だが、Gogoroが手掛けるような排気量50~125ccクラスで投入する可能性が高い。航続距離はGogoroの既存ラインアップと同水準の100km以上となりそうだ。