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 交換ステーションを必要な箇所に配備するのは並大抵なことではない。ヤマハ発は、電池パックの量産や交換ステーションの設置など、大規模な投資が必要な部分をGogoroに任せる。交換ステーションの配備は台湾だけでも「数百億円規模」(ヤマハ発執行役員の木下拓也氏)と見られる。日本は国土が大きく「自社の能力を超えた膨大な額の投資が必要になる」(同氏)。このため現在の検討範囲はGogoroのPFを使える「台湾にとどまる」(同氏)という。

 確立したGogoroのPFを使えば、ヤマハ発は車両を低コストで開発できると考えた。しかし、電池交換というサービスの根幹を他社に委ねては、ヤマハ発は従来の売り切り型のビジネスモデルから脱却できない。ある自動車メーカーの技術幹部は「電池容量とモーターの出力が決まればEVの性能の大部分が決まってしまう」と話す。ヤマハ発が開発する電池交換式EVスクーターは、GogoroのPFを使う他の車両とのコスト競争に巻き込まれる懸念がある。

 Gogoro創業者で最高経営責任者(CEO)のHorace Luke氏が「我々が狙うのは仕組みのオープンPF化だ」と語るように、今回のヤマハ発をはじめ、Gogoroは既に複数の2輪車メーカーを同社の陣営に引き込んでいる(図5、6)。

図5 台湾ゴゴロ(Gogoro)の整備店と交換ステーション、場所は台湾・台北市(撮影:日経 xTECH)
図5 台湾ゴゴロ(Gogoro)の整備店と交換ステーション、場所は台湾・台北市(撮影:日経 xTECH)
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図6  Gogoro創業者で最高経営責任者(CEO)のHorace Luke氏(撮影:日経 xTECH)
図6  Gogoro創業者で最高経営責任者(CEO)のHorace Luke氏(撮影:日経 xTECH)
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 Gogoroは台湾政府の強力な後押しを得て、2019年3月の時点で1150カ所以上の交換ステーションを配備し、1日当たり約8万個の電池パックを利用者が交換しながら使っている。利用方法は定額制が主体だ。2017年ごろから、日本の沖縄県石垣市(石垣島)や、フランス・パリ、ドイツ・ベルリンといった地域でも実証実験を進め、台湾以外の地域での本格的な展開が現実味を帯びてきている。

軽い電池で簡単交換

 台湾にはもう1社、電池交換式EVスクーター市場での躍進を目指すメーカーがある。台湾の2輪車首位であるキムコ(Kwang Yang Motor Co、以下、KYMCO)だ。2018年8月に電池交換式EVスクーターへの本格的な参入を果たした。台湾のガソリン2輪車市場で19年間にわたって首位を走る同社は、国内ディーラーを中心に「1500カ所の交換ステーションを配備した」(KYMCO)。先行するGogoroを追う。