全4828文字

 KYMCOが2018年8月に発売したのは、ガソリン2輪車「Many」をベースにした電池交換式EVスクーターだ(図7)。同年10月には出力を下げて価格を抑えた小型モデルを投入した。これらを皮切りに、3年間で10車種までEVスクーターのラインアップを増やす。同社は既存のガソリン2輪車において、スペインやイタリアなどの欧州でもシェアは上位に食い込む。「日本市場への投入も検討している」(KYMCO日本法人)とし、今後3年間で世界の20カ国に同社の電池交換PF「iONEX(アイオネックス)」を展開する考えだ。ホンダやGogoroよりも早く他地域に陣を進める。

図7 台湾KYMCOの電池交換式EVスクーター「Many」と電池交換PF「iONEX」(撮影:日経 xTECH)
図7 台湾KYMCOの電池交換式EVスクーター「Many」と電池交換PF「iONEX」(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 車両の仕上がりを見ても、KYMCOには優位性がある。このiONEXは、ホンダやGogoro陣営が抱える2つの課題を解決した。1つが電池パックの重さの問題だ。ホンダは容量約1kWhで10kg、Gogoroは同1.3kWhで9kgとしている。これは2輪車の利用者が交換するには「かなり重い」(人間工学が専門の早稲田大学人間科学部准教授の加藤麻樹氏)。

 対するKYMCOの電池パックは1個当たり容量が0.65kWhと小さいが、その分質量は5kgと軽く、寸法も小さい。利用者が交換する際の負担を減らしたり、車両設計の自由度を高めたりする効果がある。電池パックはKYMCOの内製だが、構成するリチウムイオン電池セルはパナソニックやサムスングループ、LGグループといった複数社から調達する。

 もう1つの課題は航続距離だ。交換式の電池パックを小型にしながら航続距離を延ばすために、車両本体にリチウムイオン電池を内蔵した。簡易走行用の電池パック「コアバッテリー」で、容量は0.5kWhである。交換式の電池パック2個と合わせれば容量は1.8kWhとなり、約95kmを航続できる(図8、9)。軽くて小さい電池パックによって、座席下には積載空間を確保できた。同空間に予備の電池パックを3個積むことで「約200kmまで充電無しで走ることができる」(KYMCO)という。

図8 足元に容量0.65kWhの電池パックを2個挿入する(撮影:日経 xTECH)
図8 足元に容量0.65kWhの電池パックを2個挿入する(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]
図9 KYMCOは「iONEX」の交換ステーションを台湾国内の1500カ所に配備した(撮影:日経 xTECH)
図9 KYMCOは「iONEX」の交換ステーションを台湾国内の1500カ所に配備した(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 車両開発や電池交換PFの配備で先を行くGogoroやKYMCO。先行する台湾勢に、ホンダやヤマハ発といった日本勢は追い付けるのか。グローバルの2輪市場をかけた競争は過熱していく。