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クラウドへの期待が大きいせいか、「こんなものか」という利用企業の嘆き節が聞かれる。70社の事例を検証すると、クラウドを巡っては「5大がっかり」があることが判明した。

 カブドットコム証券はオンプレミス(自社所有)環境で運用していたAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)基盤「kabu.com API」を、米アマゾン ウェブ サービス(Amazon Web Services)のクラウドサービスAmazon Web Services(AWS)上で刷新。2018年8月に稼働させた。

 必要に応じてすぐハードウエアの性能を増強できるようになり、コストがおおむね半減するという。ただし開発の過程では、最新サービスの利用で思わぬ性能ダウンに見舞われた。

 kabu.com APIは、金融商品の発注や注文照会、残高照会などの機能と情報をフィンテックのスタートアップ企業や投資顧問業者などに提供する。約30社がkabu.com APIを使っている(2018年12月時点)。それらの既存顧客は順次AWS上のAPI基盤に接続先を変更し、新規顧客は全てAWS上のAPI基盤を利用するようになる計画だ。

最新のタイプなのに遅い

 約3カ月で基本機能の開発を終え、2018年2月に性能テストを実施。ここで想定外の事態が起きた。AWS上に構築した「Push Info」サーバーで処理遅延が発生したのだ。

 Push Infoサーバーには、データを受け取るためにメッセージキューイングソフトウエアのRabbitMQを導入してある。カブドットコム証券の佐藤維人 システム開発部 技術応用チーム ジュニアスペシャリストは、「RabbitMQのキューからデータを読み出す処理で遅延が発生し、キューにデータがたまってしまった」と打ち明ける。

最新のC5インスタンスを使うも処理遅延に直面
最新のC5インスタンスを使うも処理遅延に直面
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 原因は、Push Infoサーバーに割り当てた仮想マシンサービスAmazon EC2のインスタンスタイプにあった。当初は最新の「C5」を選んだ。C5は、AWSの新基盤「Nitro System(ナイトロシステム)」による最新サービスであり、従来型の仮想マシンより処理性能が高まるように設計されている。

 佐藤氏らは試行錯誤の末、このC5が原因であることを突き止めた。そこでインスタンスタイプを旧世代の「C4」に変更したところ、「RabbitMQからのデータ読み出し速度は5~6倍上がった」(佐藤氏)。

 C5の遅延問題について、佐藤氏らは現在も継続して調査しているという。「今回開発したアプリを変更することで、C5を使った場合の性能が改善する可能性がある、ということが分かった。今後、アプリを変更し、C5での検証テストを行う予定」(佐藤氏)という。