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 パブリテック(パブリック×テクノロジー)とは、技術を使った社会問題の解決を意味するキーワードだ。前回はSDGs先進都市・鎌倉の「パプリテックシティ」に関するインタビューを掲載した(前回のインタビュー)。今回はパプリテック関連ベンチャー企業の1つであるグラファーの取り組みを紹介する。

 神奈川県鎌倉市で2019年3月28日、煩わしい行政手続きの手間を少しでも軽減しようとする実証実験が始まった。各種の手続きに必要な書類の項目を自宅のパソコンやスマホで記入し、その際に発行されたQRコードを市役所にあるタブレット端末にかざすと、プリンターで書類自体を印刷できるサービスだ。まずは、自分の名前や住所といった複数の書類に共通する項目から始め、利用者の反応に応じて対象範囲を順次拡大していく。このシステムを開発したのが、ベンチャー企業のグラファーである。

煩わしい行政手続きの手間を少しでも軽減
煩わしい行政手続きの手間を少しでも軽減
タブレット端末のカメラにQRコードをかざすと、対応する書類をプリンターが出力する(左)。出力された書類の例(右)。名前や現住所など、他の書類と共通する項目が記入された状態で印刷される。右上の氏名の欄は、署名を求められることを想定してあえて空白にしてある。
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 「国や地方自治体が制度を変えようと思うと何年もかかります。そのこと自体を否定するつもりはありません。ただ、民間側からもっと早く変えていける部分もあると思うんです」(グラファー 代表取締役CEOの石井大地氏)。

 石井氏が率いるグラファーは、技術によって社会問題の解決を目指すベンチャー企業の1つである。同社が手掛けるのは、様々な行政手続きを簡単に済ませられる各種のWebサービスだ。公共機関と市民の間を同社が取り持つことで、官が動くよりもずっと早く問題を解消できると見る。同社の一連の取り組みからは、民間の技術で社会課題に対処する際の、1つの道筋が浮かび上がる。