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 広く普及したプレカットだが、ほとんどの利用は木造軸組み構法の住宅だ。現在では、木造は住宅だけでなく、中大規模の非住宅の建築にも採用される流れがある。そういった規模の木造でも、住宅と同じようにプレカット材を用いていけるのだろうか。中大規模建築物での木材利用に詳しい木構造振興の原田浩司客員研究員に話を聞いた。(全3回のうちの第2回)

 住宅では、すでにプレカットは普及している。では非住宅、例えば、大規模な木造建築でもプレカットは使われていくのだろうか。

 住宅のプレカット機は小さ過ぎて大断面集成材などには対応できませんから、プレカット機が導入されても、大規模木造は依然として大工が墨を引いて加工をしていました。1990年代になるとCADに対応した大規模木造向けの加工機を欧州から輸入するようになりました。チェーンソーを真っすぐ下ろすような簡単な機械です。

 大規模木造は、住宅用のノウハウでは対応できずに、そういった輸入機械や大工による既存の生産システムでつくっていたんです。大規模木造の需要が少なかったので、あまり環境も整備されていなかったのだと思います。

 その後、大規模木造が注目され、どんどんと形も複雑になっていく。施工図をつくるのに、すごく時間がかかりました。特に3次元でねじれるような造形は大変で、表計算ソフトの「Lotus 1-2-3」で一辺を計算して長さを出しながら、一つひとつ描いていましたから。

 そういう大変な作業を省力化するニーズが生まれたのだと思いますが、2000年代になって3次元のCADが出てきて、簡単に計算してくれるようになりました。同時に、3次元の加工機も出てきたんです。大断面集成材の専門工場は、それを取り入れていきました。

ドイツのフンデガー(Hundegger)社製の「K2(ケーツー)」という3次元加工機(写真:防秋産業)
ドイツのフンデガー(Hundegger)社製の「K2(ケーツー)」という3次元加工機(写真:防秋産業)
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防秋産業において、「K2」で加工した木造模型(写真:原田 浩司)
防秋産業において、「K2」で加工した木造模型(写真:原田 浩司)
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 非住宅だけでなく、住宅でも、小屋組みの丸太や隅木の加工などに3次元加工機は使えます。例えば、ドイツのフンデガー(Hundegger)社が出している「K2(ケーツー)」という3次元加工機があります。日本は、住宅用のプレカット技術は進んでいますが、3次元だと遅れているので輸入品です。早い段階で入れたのが、鹿児島県肝付町の山佐木材、広島県呉市の中国木材で、その後、多くの大断面集成材のJAS(日本農林規格)認定工場が導入していきました。昨今は、山口県防府市の防秋産業のように、加工を専門とする企業が登場しています。