全3594文字
PR

次の段階に進むパナソニック

 国内における新築のIoT住宅市場で存在感が増した企業の1つとして、パナソニックは外せない。同社の動向を見ていると、IoT住宅の基盤を担う、プラットフォーム事業に力を注ぐ姿が浮かび上がる。

 パナソニックはこれまで、ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)を核に、住宅設備の連携を図ってきた。同社が販売するAiSEG2はその代表製品だ。通信プロトコルとしてECHONET Liteを採用し、シャッターや給湯器、太陽光発電システムなど、住宅の建材・設備との連携を進めてきた。昨今は、ドアや宅配ボックスにセンサーを取り付けて連携できるようにするなど、対応製品を増やしている。

パナソニック製の宅配ボックスにAiSEG2と連携する専用のセンサーを設置。宅配事業者が荷物を入れると、センサーが感知して居住者のスマートフォンに通知する(写真:日経ホームビルダー)
パナソニック製の宅配ボックスにAiSEG2と連携する専用のセンサーを設置。宅配事業者が荷物を入れると、センサーが感知して居住者のスマートフォンに通知する(写真:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]

 注目に値するのは、これらの連携機器に加えて、考え方をもう一歩進めたIoT住宅のシステム「HomeXホームエックス」を18年10月に発表したことだ。同システムは、スマートフォンとの連携が可能なシャッターや照明、テレビ、洗濯機、電子レンジといった機器の制御を可能にし、対応機器の幅を広げた。エネルギーのマネジメントだけではなく、家電製品の制御や家電製品と連携したサービスの提供も視野に入れる。

 同社はHomeXを、パソコンやスマートフォンなどのOSと同じように、IoT住宅を動かすための根幹システムと位置付ける。HomeXで住宅のIoT化を促し、住宅設備や家電機器など、家の中にある多様な機器と連系させて居住者の生活を支援する。

 HomeXはライセンス方式などを採用し、他社にも提供する方針だ。米グーグルがスマートフォン向けのOSを提供しているのと同様に、住宅向けのOSを提供するビジネスモデルだ。その具体例として、パナソニック ホームズはHomeXを搭載した住宅「カサート アーバン」を18年11月に発表した。

パナソニック ホームズが販売する、HomeX(ホームエックス)を標準で搭載した住宅「カサート アーバン」のモデルハウス。左はパナソニック ホームズの松下龍二代表取締役社長。右は、HomeXの開発を指揮する、パナソニックの馬場渉ビジネスイノベーション本部長(写真:日経ホームビルダー)
パナソニック ホームズが販売する、HomeX(ホームエックス)を標準で搭載した住宅「カサート アーバン」のモデルハウス。左はパナソニック ホームズの松下龍二代表取締役社長。右は、HomeXの開発を指揮する、パナソニックの馬場渉ビジネスイノベーション本部長(写真:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]

 住宅向けOSを実現するために、住宅内のあらゆるものをつなげる体制づくりにも注力する。19年1月23日に発表したスマートスピーカーの「コエリモ」はその1例といえる。スマートスピーカーに赤外線リモコンの信号の送信機を組み込み、他の機器との連携機能を持たない旧式のテレビやエアコンなども制御できるようにした。同製品の登場で、簡単につながる機器が増えた。

 パナソニックがこれまでに発表してきた製品は今後、機能や技術が一体化していくだろう。その母体となるのが、HomeXだと筆者は考える。パナソニックがこれまでに培ってきた技術やノウハウなどを、HomeXがのみ込むことで、あらゆる建材や設備、家電製品がつながる環境が整う。スマートスピーカーは、音声で操作するためのデバイスの1つにすぎない。連携によって、その機能を発揮すると筆者は考えている。

 HomeXの連携はハード面にとどまらない。ソフト面でも動き出した。パナソニックは、スタートアップ企業を対象としたHomeXの活動プログラム「HomeX Cross-Value Studio」を開始。第1回説明会を19年1月30日に開催した。食関係のECサービスやホームセキュリティーなどを手掛ける多様なスタートアップ企業が13社参加して、HomeXでの新たなサービスの実現を模索し始めた。

 ハードとソフトの両面から着々とIoT住宅のプラットフォームを構築するパナソニック。HomeXが本格的に稼働する環境が整えば、そこでサービスを提供する事業者が増え、そのサービスを提供するためにHomeXを採用する住宅会社が登場するといった流れになるはずだ。

 米グーグルのOSを搭載したスマートフォン端末が様々なメーカーから登場すると、多様なサービスの提供が一気に広がった。そんなふうに住宅業界でも急速にスマートホームが当たり前になる可能性がある。今後の動向から目が離せない。