全3977文字

CASEは、切り口の異なる4領域の技術革新が同時に起きるまさに大変革。しかも、それぞれで扱う技術は、伝統的自動車産業が蓄積してきたものとは異なるものばかりだ。サプライヤーは、極めて多くの得意分野とは言い難いテーマの技術開発を同時進行させなければならない。デンソー取締役副社長の若林宏之氏に、こうした環境変化への対応について聞いた(聞き手はアーサー・ディ・リトル・ジャパン)。

クルマのあり方と姿が大きく変わる中で、デンソーはいかなる事業領域に取り組み、どのように社会に価値を提供していくのか。

 当社は2030 年長期方針の中で、環境負荷の低減と高効率の移動を実現する「環境」と、交通事故のない安全な社会を実現する「安心」に注力すると明言した。これらを世の中から共感されるように進めていく。

 現在の自動車業界における技術の進歩は、かつてないほど速い。技術と機能が一体になり価値を生み出す企業である当社は、そのスピードに負けてはいけないと考えている。さらに近年では、異業種の企業とも競合するようになった。自動車業界の伝統的アプローチとは異なる技術やビジネスに対抗できる技術開発が求められる。

 そのためには、当社の仕事の進め方や価値観を刷新する必要があるだろう。ただし、こうした事業環境の変化を単なる危機とはとらえていない。これまでと違った価値を提供し、ビジネスの幅を広げるチャンスでもあると考えている。

若林 宏之(わかばやし・ひろゆき)氏=デンソー 取締役副社長
若林 宏之(わかばやし・ひろゆき)氏=デンソー 取締役副社長
東京大学工学部卒。1979 年に日本電装(現デンソー)入社後、生産技術部門で樹脂材料の研究開発に携わる。2001年に材料技術部長に就任し、環境負荷物質フリー材料の開発などを指揮。品質管理部長を経て、2006 年に常務役員に就任。2011年からは情報安全事業グループ長として、情報通信・走行安全事業をけん引。専務就任後は、自動運転時代に向けたADAS技術戦略も担当。2017 年4月から取締役副社長、現在に至る。(撮影:上野 英和)
[画像のクリックで拡大表示]

ビジネス環境の変化の中でチャンスをつかむため、どのような取り組みをしているのか。

 これまで当社は、「熱」や「電子」「パワートレーン」など技術分野ごとに事業を分類し、顧客が求める技術や製品を高品質、高性能かつ適正価格にして提供する事業を行ってきた。ところが、クルマを再発明するかのような変化が進む中で、顧客や社会が何を望んでいるかを今まで以上によく考え、顧客の困りごとや社会課題を解決するソリューションを生み出すことが大切になってきたと考えている。

 当社が取り組むソリューションを「エネルギー」、「セーフティー」、「コネクテッド」、「HMI(Human Machine Interface)」と定義した。この4 領域に向けて、当社の強みであるモノづくり力に裏打ちされた価値あるソリューションを生み出し、提供していく。