前回の記事(なぜ大手家電メーカーはフードテック・スタートアップとの連携を急ぐのか)では、フードテックという領域がコンシューマー向け技術イベント「CES」で盛り上がってきたことをお伝えした。では、なぜ今これほどまでにフードテックという領域が海外で盛り上がっているのか。
年間7兆回の「顧客接点」、食は広大な事業機会
1つには事業機会としての広がりがある。食は人間が誰しも行う行為であり、1日3回の食事を365日、全世界70億人が体験することを仮定すると、実に年間7兆回という数のトランザクションが発生することになる。これに間食や飲み物を加えるとすさまじい数、種類のアクションである。これらはアナログな行為であり、これまでは食品業界や外食業界といった一部の業界だけが注目していた領域であった。
しかし、年間7兆回という魅力的な「顧客接点」と多種多様にわたるユーザーニーズの広がりを見て、特にデジタルやバイオサイエンスの分野から多くのスタートアップ企業が生まれている。サンフランシスコでは、毎年6月に個別最適化した栄養摂取にフォーカスしたイベント「Personalized Nutrition Innovation Summit」が開催されている。腸内細菌や遺伝子、血液データから体調や体質を判断し、それに合った料理のレシピや運動メニューを提案する、というサービスを立ち上げている数多くのスタートアップが登壇していた(図1)。
米国の調査会社のCBインサイツが発表している「12 Food Trends to Watch In 2018」によると、近年多くの食品会社がCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を立ち上げてスタートアップを育成したり、食品・飲料分野における投資機関の数が増加していることが分かる(図2、図3)。