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 少し前のイベントになるが、2019年5月イタリアのミラノで世界最大級のフードイノベーションに関するサミット「Seeds & Chips(以下S&C)」が開催された。筆者は2017年からS&Cに毎年参加し、欧州におけるフードイノベーションの特徴や最新動向をリサーチしている。2019年8月には、筆者が所属するシグマクシスが主催者となり、Smart Kitchen Summit Japan(以下SKS Japan)を東京で開催、フードテックの未来が熱く語られた。今回は、この2つのカンファレンスから見えてきた最新動向をお伝えしよう。

ミラノで確信!ローカル性が強くて面白いイタリアのイノベーション

 S&Cはもともと、2015年に食をテーマにして開催されたミラノ万博が起点となって始まった展示会であり、それ以来、毎年開催されている。2017年にはキーノートスピーカーとして米大統領を務めたバラク・オバマ氏、2018年には同じく米国の国務長官を務めたジョン・ケリー氏と米スターバックスのハワード・シュルツ元会長、2019年にはイタリアのジュゼッペ・コンテ首相も登壇するなど、世界各地から政治家や事業家、アカデミア含め300人の著名人がミラノに集結している。公式発表はないが、報道によれば300人の登壇者、1万5000人の参加者が訪れるという。

 イタリアに関しては、面白いデータがある。1日当たりの平均料理時間と、食事時間の国別統計を見ると、イタリアと日本は非常に似ているのだ。米国と比較すると分かりやすいが、日本の1日当たりの平均料理時間が64分、イタリアが61分なのに比べ、米国は51分。食事時間は、日本が117分、イタリアが114分なのに対し、米国が74分である 1)。イタリアには日本と同じように各地域に根付いた食文化があり、食に対するスタンスが似ていると感じる。

1)OECD、楽天リサーチ、GfKの調査をもとにシグマクシス分析

 産業構造としても、巨大な外食チェーンやプラットフォーマーが乱立する米国とは違い、個店も多く、実にフラグメントな世界である。そんなイタリアにおけるフードテックは、プラットフォーマーのような動きというよりは、おしゃれなデザインのプランターを使ったバーティカル・ファーミング(垂直農法)キットや、最高のカルボナーラを作るためだけのミールキットや、ピザが冷めないようなパッケージなど、個性の強いサービスがたくさんあり、非常に面白い。