全2282文字
樹脂製の可動式ケーブル保護管や歯車、軸受、ベアリングなどの製造を得意とする機械部品メーカーの独イグス(igus)。ドイツ西部に位置するケルン市の本社敷地内には、工場や研究開発施設も併設されている。
これら施設の特徴は「自由」かつ「開放的」で「拡張性」が高い点にある。そんな施設を象徴するのが建屋の構造だ。鉄塔が主構造となって屋根と壁を吊っている。そのため建屋内の柱と壁を最小限に抑えられ、見通しが良く、従業員の移動も、材料や製品の運搬もしやすい。
鉄塔が屋根と壁を吊り、柱を最小限に抑えてレイアウトの自由度を高める
建屋はモジュール化しており、1辺は67.5mの正方形。主構造の鉄塔はその中央に設けた中庭に立つ。建屋の屋根と壁の荷重をほとんど鉄塔が負担する構造と合わせて、簡易な施工システムを採用しているので、建屋の増設も容易だ。稼働を開始した1994年以降、既に6回にわたって増設しており、2019年4月時点で工場部分の延べ面積は約12万7800m2に及んでいる。2020年には隣接地に新棟を増設予定だ。
最も大きなメリットは、建屋内のレイアウト変更が容易な点だ。壁と柱がほとんどないので、製品数や生産量の増減に合わせて、生産エリアや生産ラインを変更できる。国内外の経済状況や技術の進歩にスムーズに追随し、顧客のニーズや自社の経営方針に合わせて工場を運営できるのが、この工場の最大の特徴だ。