アズビルが、グローバル生産体制の強化に向けて湘南工場内(神奈川県・寒川町)において自動化や人工知能(AI)の活用に力を入れている(図1)。
同工場は、FAやプロセスオートメーションなどのシステムの他、スイッチやセンサーといったコンポーネント製品などを製造する。2018年6月にクリーンルームなどの生産エリアを備えた新事務棟(A棟)を、2019年4月には新生産棟(B棟)を建設するとともに、同社伊勢原工場(神奈川県伊勢原市)の生産機能を移管して、最先端の生産技術の開発や実証を推し進めている(関連記事)。
少ない不良画像、学習に1年
その先端技術の1つが、差圧発信器「AT9000」のセンサー部のはんだ付け工程におけるAIを活用した良否判定だ。差圧発信器は、上流側と下流側の2点の圧力差から液体や気体などの流量を計測する機器。その圧力センサー部の製造工程に、センサーの信号をA/D変換する回路基板をはんだ付けする工程がある。自動機が糸はんだを溶かして、外側・内側それぞれ8カ所、計16カ所のピンをはんだ付けするが、「使用環境が厳しいため、はんだ付けへの品質要求も厳しい」(同社技術開発本部工程開発部部長の關宏治氏)。差圧発信器は高い圧力がかかったり、高温・低温環境にさらされたりする機器のため、はんだ付けが不均一だと割れて接触不良が発生するなどの問題が起こるからだ(図2)。
湘南工場ではその良否判定にAIを導入した。16カ所のピンを撮影した画像から、機械学習させたAIが適切にはんだ付けされているかどうかを判断する。不適切なはんだ付けの可能性が高いピンは赤色で表示して注意を促す(図3)。
従来は、はんだ付けも外観検査も全て人が行っていた。しかし、「人に依存していると海外展開の障害となる」(關氏)。そこでマザー工場である湘南工場の生産方式をグローバルに広げられるよう、はんだ付けおよび検査の自動化を図った。
難しかったのは、不良の発生率がコンマ数%しかないこと。不良の画像データが集まらないため学習に時間がかかる。同工場では、移管前の伊勢原工場での生産期間も含めて1年ほどの学習期間をかけたという。良品画像だけで学習させる方法もあるが、「(良品を不良と判定する)過剰判定が増えてしまう」(同氏)という。
現在、AIによる外観検査は、湘南工場と藤沢テクノセンター(神奈川県藤沢市)に導入している。「ここ数年の研究で(AIを)適用しやすい分野が分かってきた。できるところ横展開していく」(同氏)。さらに将来は、外観画像だけでなく「はんだ付け部を3D計測してフィレット形状なども合わせて検査していく必要があるだろう」(同氏)という。