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「水野さんって、何でも自分がやったみたいに言うでしょ。嘘なんです。実は全部僕がやったんです。水野さんは言うだけ」。 好青年にしか見えない風貌、物腰から強気の発言が飛び出す。高橋孝治。数学科出身という異色の経歴を持つエンジニア。水野と出会い、育てられ、そしていつかその口ぶりまでも…。

 事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ。

 会議室での戦いに敗れた日産自動車の水野和敏は、怒りをばねに次なる作戦を考えた。現物を作って、役員を乗せてしまおう。現場に出て、現物に触れて、現実的に行動する──という「三現主義」を地で行こうというわけだ。

 それも秘密裏に作り上げ、突然乗せてしまおうというゲリラ作戦である。大組織を議論だけで動かそうとしてもムリ。やってみせるしかない。けど、さすがに1人ではできそうにない。試作車を1台、秘かに作ろうというわけだから。

高橋孝治
高橋孝治
取材時は日産自動車第一車両開発部第二車両開発センター主査。(写真:栗原克己)。
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「孝治しかいないな、やっぱり」

 水野は高橋孝治の顔を思い浮かべた。

「でもな…」

 通常の業務をこなしながらのゲリラ活動。信じられないハードワークになるだろう。

「あいつのカミさんには俺から謝っておくか」