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かつてないほどPythonが人気だ。最近のプログラミング言語をあまり知らないという“おじさん”のために、人気の理由や基本的な特徴を分かりやすく解説しよう。

 ソフト開発にプログラミング言語のPython(パイソン)を採用するユーザー企業が増えている。では、各社はいったい何に使っているのか。これを明らかにするために、以下では眼鏡販売大手のジンズ、タイヤ世界シェア1位のブリヂストンの事例からPythonの使いどころを取り上げる。一言でいえば、Pythonはもはや常識だが、適用領域は限定的というものだ。

 簡単におさらいすると、Pythonには大きく2つの特徴がある。すなわち「AI(人工知能)を使ったソフトの開発に向く」「データ分析で豊富なライブラリーを使える」の2つだ。ジンズとブリヂストンでは重視したポイントこそ異なるが、基本的にこれら2つの特徴を評価してPythonを採用した。

 ただPythonは実行速度が遅いし、急速に利用が拡大してから日が浅い。Pythonを採用する企業は適材適所を見極めて、最も威力を発揮する用途で使うようにしているのが一般的だ。

ジンズの新型店舗はPythonで開発したAIが支える

 「あなたの眼鏡の似合い度は84%です」――。眼鏡フレームが似合っているかどうかをAIが教えてくれる鏡が、JR上野駅構内に登場した。眼鏡販売大手のジンズが2019年1月にオープンした、「JINS BRAIN Lab.エキュート上野店」だ。この鏡の中核を成すシステムは、Pythonを使って開発している。

JINS BRAIN Lab.エキュート上野店の店頭にある鏡
JINS BRAIN Lab.エキュート上野店の店頭にある鏡
(出所:ジンズ)

 眼鏡フレームの似合い度は「JINS BRAIN」と呼ぶ、ジンズが独自開発したAIで判定する。2016年11月にリリースし、改良を続けている。もともとはオンラインショップで眼鏡フレームのリコメンド(お薦め)を提示するために開発した。同社のオンラインショップでは、顔写真に眼鏡フレームを重ね合わせる仮想的な試着サービスを提供している。このサービスを利用した際、JINS BRAINが似合い度を示してフレーム選びのヒントを提示する。

 JINS BRAINの開発にPythonを採用したのは、「画像から似合い度を推定するAIモデルを構築するのに、深層学習ライブラリーのTensorFlow(テンソルフロー)を使う」(同社IT経営改革室ITガバナンス室の佐藤拓磨氏)ためだった。TensorFlowは米グーグル(Google)が開発して公開した、深層学習の複雑な処理を簡単に呼び出せるツールである。

ジンズのIT経営改革室ITガバナンス室の佐藤拓磨氏(左)と同MEME事業部デジタル事業部デジタルコミュニケーショングループの冨田翔太氏(右)
ジンズのIT経営改革室ITガバナンス室の佐藤拓磨氏(左)と同MEME事業部デジタル事業部デジタルコミュニケーショングループの冨田翔太氏(右)
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 佐藤氏は「TensorFlowを使うと決めた時点で、必然的にPythonを採用することになった」と振り返る。TensorFlowを操作するプログラミング言語としてはPythonが最も実績があり、ノウハウも多い。また、TensorFlowは複数のプログラミング言語で操作できるが、安定的な動作を約束しているのはPythonだけだ。