USB Promoter Groupは2019年3月、機器間インターフェース「USB」の次世代仕様「USB4」の仕様を策定中であることを明らかにした。実に約10年ぶりの世代更新となる。注目すべきはそのスペックだけではない。USBで強まる米アップル(Apple)の影響力だ。それはType-Cコネクターの登場から始まった。本連載ではType- CからUSB4までの進化とその糸を操るアップルの動きを振り返る。
「新型iPad ProがUSB-C(Type-C)コネクターを採用したのは正直驚いた」(USBに詳しいある電子部品メーカーの社員)――。米Apple(アップル)が2018年10月30日(現地時間)に発表したタブレット端末「iPad Pro」の新機種のことだ(関連記事)。従来機に比べてさまざまな性能向上や変更点がある中で、機器間インターフェース業界で注目を集めたのが、コネクターを従来の「Lightning(ライトニング)」からUSB Type-Cに変更したことである。
多くのAndroid端末(スマートフォンやタブレット端末)がType-Cコネクターを採用する中で、アップルはパソコンにはType-Cコネクターを採用していたものの、iPhoneシリーズやiPadシリーズといったiOS端末では、かたくなに独自のLightningコネクターを搭載し続けていた。2018年9月に発表されたiPhoneシリーズの新機種でも、Lightningコネクターを採用している。そんな中、その翌月に発表されたiPad Proの新機種ではいともあっさりとType-Cコネクターを採用したのである。
Type-Cは「アップル色」が濃い
Type-Cは2014年に仕様が策定されたコネクターで、そもそも「アップルの要請でType-Cの仕様策定が始まった」と、USB規格に詳しい技術者は口をそろえる(関連記事)。欧州市場で、環境負荷低減のために、携帯電話機などの電源端子をMicro USBで統一し、ACアダプターを削減すべきとの要求が強かったためである。ところが当時、アップルはiPhoneやiPadでLightningコネクターを採用していた。
そこでアップルは、同社の望む機能を盛り込んだ小型USB端子の仕様策定に乗り出したとされる。実際、Type-Cの仕様書に記載された策定メンバーを見ると、アップルの関係者が多く参加していた。
Type-Cがアップル向けの規格であることは、搭載された機能を見れば分かりやすい。アップルが望む機能に対応していたからだ。その代表例は、裏表どちらでも挿入できる「リバーシブル」に対応すること。これはLightningで採用された機能である。
最大100W(20V、5A)を供給できる給電仕様「USB Power Delivery Specification(USB PD)」への対応も、アップルが好む機能だ。USB PDの登場前に大きな電流を流せた仕様は、「USB Battery Charging(USB BC)」で5V、1.5Aだった。アップルはUSB PDが登場する前から、iPadにおいてUSB経由でありながら2Aと大きな電流で急速充電できるようにしていた。現在ではこうした急速充電は当たり前だが、当時は珍しかった。アップルが大電流による急速充電を強く求めていた証左である。
このほか、「Alternative Mode」と呼ぶ動作モードで、Type-Cコネクターで「DisplayPort(DP)」や「Thunderbolt」などの他の映像系の機器間インターフェースの信号を伝送できることも、アップル好む仕様と言える。