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 建築界を揺るがせた構造計算書偽造事件を端緒に、提出後の図面修正を許さないなど厳格化を図った建築確認制度。住宅着工数に少なからぬ影響を与え、2年もたたずに簡素化・合理化へと大きく揺れ動いた。同制度を所管する国土交通省住宅局にはこの時の教訓が語り継がれ、手続き関係の制度変更を企画立案する際の縛りとなっている。4号特例見直しに動き出したように見える状況でもこの“トラウマ”は生き続けている。

 4号特例について一度は「見直すことにしている」と宣言しながら、その後「当分の間継続する」という方針に転換した国交省。そのブレはなぜ生じたのか。9年を経てその方針は変わるのか。国交省の淡野博久・建築指導課長は、日本弁護士連合会主催の公開シンポジウム(2018年10月)のパネルディスカッションの席で次のように説明した。

「先ほど(基調報告で)深井室長(深井敦夫・建築指導課建築物防災対策室長)から紹介した際に、構造計算書偽造事件を受けて07年に確認手続きを厳格化した時の住宅着工数への影響を表すデータが示されたと思う」

「あえて紹介したのは、駆け込み着工の反動減もあったが、制度見直しのインパクトがばかにならなかったと考えているからだ」

シンポジウム前半の基調報告で、国交省の深井敦夫・建築指導課建築物防災対策室長が淡野課長の代理として説明・配布した資料のうち「住宅着工数の推移(07年4月~08年5月)」。 建築確認手続きを厳格化した改正建基法が施行された07年6月以降、着工数は急減した(資料:国土交通省)
シンポジウム前半の基調報告で、国交省の深井敦夫・建築指導課建築物防災対策室長が淡野課長の代理として説明・配布した資料のうち「住宅着工数の推移(07年4月~08年5月)」。 建築確認手続きを厳格化した改正建基法が施行された07年6月以降、着工数は急減した(資料:国土交通省)
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 構造計算書偽造事件の影響で建築確認手続きを厳格化した結果、07年通年の住宅着工数は大きく落ち込んだ。この急変は国会でも問題視され、当時の国交相が国民経済に影響を与えたとして陳謝する事態にもつながった。

 大臣をバックアップする立場にある官僚たちは相当のおきゅうを据えられたに違いない。その時の反省は今も国交省住宅局の官僚が共通認識とすべき“教訓”として語り継がれ、戒めになっているようだ。淡野課長は次のように説明した。

「最初、特例の見直しを打ち出した時は“ああいう問題が起きたのだから、とにかく厳格化しなければ”と、針がものすごく振れていた」

「その後、制度見直しによる着工数減少のインパクトがものすごく大きくて、非常にご批判を受けたので、とにかく手続きを簡素化、合理化しようと、また反対側に針が振れた。その時に“当分継続せざるを得ない”という方針を出した」

「それが今はようやく中庸に戻りつつあると正直思っている」

 この発言に続き、淡野課長は“我々”と言いながら次のように述べた。

「それ以来、特に手続き関係の制度改正ではそれが及ぼす社会的インパクトを十分に考慮して、経済への悪影響を最大限回避する必要があると考えている。そして、この時のことを教訓として覚えておこうと我々は思っている」

「今後、仮にそうした手続き関係の制度を見直す際は、細心の注意を払って、社会的インパクトを生じさせないようにしなければならない」