計1266本のヒノキ材で壁高欄をすっぽり覆った独特な橋が、山口県岩国市に誕生しました。ヒノキ材の醸し出す柔らかな雰囲気と、橋に近づくにつれて見え方が変化する力強さが同居しています。
2018年7月の西日本豪雨で被災し、県が4年の歳月をかけて架け替えた「久杉(くすぎ)橋」です。
ヒノキ材のデザインを手掛けたのは、国立競技場などの設計で知られる建築家の隈研吾氏です。橋を設計した大日本コンサルタントと共に、木とコンクリートを組み合わせた橋づくりに挑みました。
被災した久杉橋は、県が1954年に整備した橋長15mの鉄筋コンクリート(RC)橋です。日本酒「獺祭(だっさい)」を製造・販売する旭酒造(岩国市)の直売所の目前で、2級河川の東川をまたぎ、対岸の川沿いを通る県道5号につながっていました。
西日本豪雨の際に、土砂崩れなどで発生した流木や土砂が東川に流れ込み、桁に衝突。高欄が折れ曲がるなど大きく損傷しました。県は旧橋の原形復旧が困難と判断し、新たな橋に架け替えることにしました。
新しい橋は、橋長20.8m、支間長19.9m、有効幅員6.5mのPC(プレストレストコンクリート)単純プレテンション方式中空床版橋です。隈氏のデザインにより、旧橋になかった歩道部を下流側に設けました。橋を渡りながら木に触ったり、写真を撮ったりする人たちを多く見かけます。
橋の架け替え工事は、西日本豪雨から丸4年となる2022年7月に完了しました。総工費は約3億7000万円。うち2億円は、隈氏のデザインを盛り込んだ橋の修景化に伴う費用です。ただし、修景化の費用を負担したのは、事業主体の山口県ではありません。いったい誰が修景費を負担したのでしょうか。3択です。
- 岩国市
- 酒造会社
- 市民有志(クラウドファンディング)