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2.図書館に通学路などの動線を引き込んだ

(写真:吉田 誠)
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 黒磯駅周辺はリゾート地である那須高原の玄関口であり、東北本線の要衝として栄えてきました。しかし、1982年に東北新幹線が開通すると活気を失ってしまいました。新幹線が停車するのは、1つ隣の那須塩原駅になったからです。黒磯駅を中心とする旧黒磯市は2005年に、隣接する2町と合併。那須塩原市になりました。

 那須塩原市は黒磯駅周辺のにぎわいを取り戻すため、国土交通省の「都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)」の制度を活用。黒磯駅周辺地区の都市再生整備計画を策定し、14年度から整備を進めてきました。その拠点施設の1つに位置付けたのが「那須塩原市図書館みるる」です。

 都市の再生を主眼とするため、この建物は従来の図書館という枠を超えた機能を備えるように設計されました。象徴するのが、街路のように地上1階の館内を縦断する「アーバントレイル」です。駅に通じる北側と、街中の交差点に面した南西側にある2つのエントランスをつないでいます。

 「市民の生活動線を館内に取り込んだ。図書館に用事がなくても、ここを通り抜けるうちに様々な交流や活動が生まれることを期待した」

 図書館を設計したUAo(東京・渋谷)代表の伊藤麻理氏は、アーバントレイルを設けた意図をこう説明します。同社は那須塩原市が実施したプロポーザルで、16年3月に設計者に選ばれました。

 アーバントレイルの両側にはカフェやギャラリー、創作活動のためのラボ、最新の情報を伝えるニュースエリアといったゾーンが並びます。その中に市民の交流や活動に使える「森のポケット」と呼ばれる、2層吹き抜けの空間が点在しています。森の中にぽっかりと空が開けたようなスペースです。

(写真:吉田 誠)
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 通り抜ける人にも館内にとどまってもらいやすい工夫を凝らした1階に対し、2階は見通しが利く大空間の本の閲覧エリアが広がります。LVL(単板積層材)のルーバーを張った天井は、頭上に広がる木立をイメージしたものです。森の中を散策するように、本の世界を探検できます。

 「誰にとっても分かりやすく、愛着を持ってもらえる図書館になるよう、森の中で木立を見上げるような空間を提案した。本当の森のように多様な場所を館内につくり、交流が生まれる施設を目指した」と伊藤氏は話します。

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