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2.「逆さ富士」をイメージした逆円すい台の形にした

(写真:平井 広行)
(写真:平井 広行)
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 13年に富士山が「信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産に登録されたのを受け、静岡県は国内外に情報発信する施設を計画しました。建設地に選んだのは、富士山本宮浅間(ほんぐうせんげん)大社に近接する土地です。

 14年の公募型設計プロポーザルで坂氏が出した案は「逆さ富士形」の建築です。富士山の湧き水を利用した水盤に逆さ富士の建築が映ることで、鏡像として富士山形が完成します。

 「中学・高校のころにラグビー部の合宿で山中湖に行った。そのときに見た、水面に映る逆さ富士の印象が強烈だった」と坂氏は語ります。

 大社内の湧玉池(わくたまいけ)を水源とする神田川から引いた水は、1年を通して約15度と安定しています。そこで水盤に張る前に、冷暖房の熱源として利用します。これにより、年間空調エネルギーの約20%を削減できる試算です。

 「『富士の水の循環と反映』がプロポーザルのときからのテーマの1つだった」と、坂氏は説明しています。

(写真:平井 広行)
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 建物に入ると、スロープで逆さ富士の内部の展示室に導かれます。全長193mのスロープに沿って、海から富士山頂までの風景が壁面に映し出され、登山を疑似体験できます。

 映像同士の間では、投影された登山者の動く影に自分の影が重なります。投影機の位置の関係で風景を映し出しにくい場所を、逆転の発想で登山を印象付けるインスタレーションに生かしました。

 「建築と展示空間が一体になることが重要だ」と考えた坂氏は、展示コンテンツの総合監修に竹村眞一氏(京都芸術大学教授)、展示デザイン監修にエドウィン・シュロスバーグ氏(米ESI Design代表)を招へい。展示設計の丹青社が取りまとめ役となり、県職員と5人の学芸員を交えた5者で、展示デザインの方向性をまとめました。

 丹青社デザインセンターの高橋久弥プリンシパルクリエイティブディレクターは「空間に情報が露出するのは最小限に抑えて、情報過多による来館者のストレスを避けることができた」と言います。

 「市民が喜び、誇りに思う公共建築をつくりたい」と話す坂氏の狙い通り、開館直後の1カ月で6万3000人が入場しました。清水港に入る客船からの来館者もあり、富士山世界遺産センターは静岡観光の新たなシンボルになっています。