世界中で販売されている数多くのデジタルデバイスを製造している中国の深セン・華南地域。昨今は人件費や土地価格の高騰により、東南アジアへの工場移設が取り沙汰されるが、今でも深セン・華南地域が世界の工場なのは間違いない。そんな中で日本向けに数多くのデジタルデバイスを製造している会社がある。それが中国・香港に本社を持つグループセンス(Group Sense)だ。日本向けの製品開発と深セン・華南地域でのものづくりについて、日本法人であるグループセンス(東京・中央)代表取締役社長の大谷和広氏に話を聞いた。(聞き手=コヤマ タカヒロ、日経ものづくり副編集長 吉田 勝、構成=コヤマ タカヒロ)

大谷和広氏が率いるグループセンス日本法人は、主に日本企業からの製造受託を目的として2007年に設立された。母体となるのは香港に拠点を置くGroup Senseだ。
もともとシャープに勤めていた大谷氏は、1987年ごろから駐在員として香港に赴任。半導体や液晶パネルなどの販売を担当していた。そんな中、とある部署から「ソフトウエアからハードウエアの製造まで全部任せられるところを探してくれ」と言われ、Group Senseと出会った。
「ビジネスを始めたのですが、ビジネスカルチャーの部分でなかなかうまくいかなかった。間に入っていろいろ調整しているうちに、シャープを辞めてGroup Senseに入ることになったんです。1997年のことでした」
自社ブランドから日本のODMへシフト
現在、EMS事業として日本の家電メーカーや文具メーカーが販売する様々な製品の開発・製造を請け負っているGroup Senseだが、もともとは自社ブランドの電子辞書を手がけるメーカーだった。1988年に現会長・社長兄弟が会社を設立し、翌1989年に「快譯通」ブランドで英語と中国語の電子辞書を発売したところ、中国市場で爆発的にヒットした。
「日本では『ウォークマン』がミュージックプレーヤーの代名詞になったように、『快譯通』といえば電子辞書を指すほどのトップメーカーになった。
その後、携帯電話機能付きのPDAなども展開し、2003年にはいち早くスマートフォンも製品化しました。スマホを最初に出した数社のうちの1社です」
しかし、電子辞書の爆発的なヒットは長くは続かなかった。そこで始めたのがODM事業やデバイス事業だった。
「私が入社してから、日本メーカーのODM製品を数多く手がけるようになりました。電子手帳に始まり、当時、携帯キャリアが発売していた電子メール端末の多くを製造していました」
自社ブランドの事業がどんどん尻すぼみになっていく中、この日本向けの事業がちょうど立ち上がってきた。そこで日本の窓口として2007年に設立したのが、大谷氏の率いるグループセンス日本法人である。今ではODM事業全体の75%が日本からの受注という。