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 世界中で販売されている数多くのデジタルデバイスを製造している中国の深セン・華南地域。昨今は人件費や土地価格の高騰により、東南アジアへの工場移設が取り沙汰されるが、今でも深セン・華南地域が世界の工場なのは間違いない。そんな中で日本向けに数多くのデジタルデバイスを製造している会社がある。それが中国・香港に本社を持つグループセンス(Group Sence)だ。日本向けの製品開発と深セン・華南地域でのものづくりについて、日本法人であるグループセンス(本社東京)代表取締役の大谷和広氏に話を聞いた。(聞き手=コヤマ タカヒロ、日経ものづくり副編集長 吉田 勝、構成=コヤマ タカヒロ)

大谷 和広=グループセンス代表取締役社長/Group Sense Executive Director
大谷 和広=グループセンス代表取締役社長/Group Sense Executive Director
おおたに・かずひろ:1960年生まれ。1983年に関西外国語大学卒業後、シャープに入社。半導体営業などに従事した後、同社の香港駐在員としてSHARP-ROXY(Hong Kong)にて電子部品部門の総経理を務め、香港の顧客向けに主に半導体と液晶を販売する。1997年にGroup Senseに転じ、Executive Directorとして日本顧客向けODM事業やタッチパネル事業を担当。2007年に日本法人のグループセンス代表取締役社長に就任。

 大谷氏がGroup Senseに転じて約30年。深セン・華南地域はいま大きな変革期を迎えている。海外企業からの受注を中心としたOEM、ODM工場は減少し、米中貿易戦争によって米国市場向けの製品を製造する工場は東南アジアへの移管も進んでいる。

 深セン・華南地域はもちろん近隣の東莞市などでも人件費が高騰して採用が難しくなっている。しかし、そうした深セン・華南地域の変化も追い風だと大谷氏は語る。

 「受注の状態は大きく変わってきています」

 以前は、1つのプロジェクトに対して何社からも相見積もりを取り、比較検討してから発注というケースが多かったが、最近は1、2社にしか見積依頼を出さないケースが増えているという。

 「グループセンスは日本向けの仕事が非常に多く、日本の商習慣をよく理解しているという点に魅力を感じてもらっているようです。米中貿易戦争の影響で工場の長期休止や閉鎖といった話も聞こえてきますが、グループセンスは米国向けの事業がないので、かえってワーカーさんを集めやすくなるという点で追い風です」

 とはいえ最低賃金が毎年上がり、人件費は上昇を続けている。加えて地方都市の開発と発展が進むと、わざわざ親元を離れて働きに出る労働者が減るため、人を集めにくくなるとみている。特に女性はその傾向が強い。労働者の確保は今後も課題となるだろう。それでもGroup Senseはこれからも深セン・華南地域でビジネスを続けていくという。

 「深センや華南地域で頑張れば売り上げはまだまだ上げられます。当社が造っている製品は多数の部品を使います。部品のサプライチェーンの多くは華南地方にあるため、タイやベトナムといった東南アジアに工場を移すと、部品に問題があった場合にすぐに対応してもらえません。しかし、深セン・華南地域でなら地元で解決できる。部品のサプライチェーンのある華南地方でものを造るということには大きなメリットがあるのです」