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「和歌山フィニッシュ」がまずは目標

 鳴海氏が次のチャレンジとしてもくろんでいることはもう1つある。創業の地である和歌山での生産である。今年4月、和歌山に拠点を置く写真現像機メーカー、ノーリツプレシジョンと業務提携を発表している。

「カー用品も、もちろんglafitバイクもこれまでずっと中国で生産してきました。中国では単なる生産委託ではなく、既存の工場のラインを借り上げ、我々の仕様で製造ラインを造ってもらって生産するようなところまで経験しています。

 ノーリツプレシジョンはかつて写真現像機で世界シェアの7割を持っていた時代もある名門メーカー。和歌山のものづくりの老舗です。2年前から一緒にやりたいとアプローチしていました。そして今回の業務提携はノーリツプレシジョンの工場内にglafit専用のラインを置くような生産体制を意図しています。中国でやっていたのと同じやり方です。ようやく和歌山でのものづくりの道筋が見えてきました。

 やりたいことは簡単です。パソコンメーカーのVAIOが『安曇野フィニッシュ』と呼ぶのと同じやり方、つまり最終の組み立て工程を和歌山に置きたい。『和歌山フィニッシュ』です。日本の工場の力を使って和歌山で最終工程を実施して、精度や仕上がりをもう一段高めたい」

 とはいえ、日本でのものづくりはコスト面でのハードルが高い。ビジネスである以上、地元だからという情だけで和歌山に生産拠点を移せないし、株主を説得する必要もある。和歌山フィニッシュによる不良率の減少と、それで生じる間接コストの削減効果などをトータルで見るとコストが下がると説明し理解を得る考えだという。

現時点で明確なのはglafitでは和歌山フィニッシュを目指すというところだけ
現時点で明確なのはglafitでは和歌山フィニッシュを目指すというところだけ
(出所:glafit)
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「我々は販売価格を先に決めてから逆算してものづくりをしています。こうしたやり方はベンチャーでは珍しいかもしれないけど、glafitバイクの前からそうやってきました。その逆算でできなければやめる。明確です。

 和歌山フィニッシュも同じです。価格に収まらないならやらず、中国での生産を続けるだけなんです。和歌山での生産は、1カ月後にゴーサインが出せるかもしれませんし、1年以上、出せないかもしれません。現時点で明確なのはglafitでは和歌山フィニッシュを目指すというところだけです」

 Makuakeでのクラウドファンディング、そしてオートバックスでの販売開始から約2年。EV時代の自動車メーカーになるために始まったglafitは、ヤマハ発動機から1億円の出資を受け、そして、パナソニックやノーリツプレシジョンとも業務提携を行うなど、スタートアップとしてさらに注目を集める存在となっている。

「大きな課題は次を出すことです。『01』を出すのはある意味誰でもできる。最初はなんだってできますから。でも僕らはもう始めてしまったのでよりよい『02』、それを改良した『03』と出し続けていく必要がある。少なくとも自分たちのものづくりがアップデート、進化できていないと進めません。スタートアップにはそれが難しい。

 考えてみてください。これまで『02』を出せたスタートアップがどれくらいいたか。でもやりますよ。やり続けて『21世紀のホンダ』の夢をかなえます」

 最終目標は自動車メーカー。それは変わらないが急ぐことではないようだ。glafitバイクを造る中で見えてきた様々な知見と経験、そして社会的な課題。それらをさらに積み重ねていく。「21世紀のホンダ」を目指すglafitのものづくりは、1歩ずつ前に進んでいる。