全天球カメラ「Insta360」シリーズで知られる深センのスタートアップShenzhen Arashi Vision(シンセン・アラシ・ビジョン)の創業者JK Liu氏に現地でインタビューした。同社は創業5年、創業者のLiu氏もまだ28歳と若い企業だが、深センを代表するハイテクベンチャーの1つになっている。
Liu氏が南京大学在学中の2014年に南京で起業、程なく深センに拠点を移し、2016年にiPhoneに接続して使える全天球カメラ「Insta360 Nano」を出荷。2万円台と手ごろな価格もあって大ヒットし一躍、全天球カメラのトップメーカーの仲間入りをした。
深セン市内の西側エリア、深セン宝安国際空港に近い宝安区の再開発地区に建つ真新しいオフィスビルにあるシンセン・アラシ・ビジョン本社を訪ね、JK Liu氏に目指すものづくりと深センの今について話を聞いた。
日本のテレビドラマが映像に興味を持つきっかけ
シンセン・アラシ・ビジョンは創業当初、南京で携帯電話によるライブ配信製品を手掛けていたが、その後深センに移転、全天球カメラ市場へ参入した。現在はコンシューマー向けから業務用まで数多くの全天球カメラ製品ラインアップの他、超小型のウエアラブルアクションカメラ「Insta360 GO」など新たな分野の製品も手掛ける。
JK Liu氏が映像機器を手掛けるきっかけとなったのは意外にも日本のテレビドラマだという。学生時代から「白い巨塔」や「1リットルの涙」といった日本のドラマを楽しんでいたJK Liu氏。自分でも映像作品を撮ってみたいと考えたが、そこには多くのハードルがあった。
映画やドラマで使える映像を撮るにはプロのカメラマンと編集のスキルが必要になる。フレーミングを考え、ベストな位置で撮影し、それをまとめなければいけない。スキルの無い人が同じことをするためにはどうしたらよいか? 決まったフレームではなくすべてを記録すればいい。そしてそこから必要な映像を切り出す。さらにAIが編集する。そうすればプロのスキルを持たない素人でも映画やドラマのような映像が撮れるはずーー。これがInsta360に至る最初のアイデアだったという。
JK Liu氏:一般のユーザーがどうしたら良い作品がつくれるか考えて、全天球カメラに行き着きました。周りの空間すべて「360度」の映像を全部記録すれば撮り漏れはありません。そうして撮ったあとに映像を自由に編集して好みのアングルやカットに仕上げればいいわけです。プライベートをプロのカメラマンがずっと撮ってくれているようなもの。Insta360はそういうカメラを目指しています。