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ATOM Camは最初の一手、センサー追加やサブスク型サービスを開始

 好調なATOM Camだが、気になるのは売り切り型であること。ネットワークカメラのサービスを続ける間はサーバーコストが継続的にかかってくる。既存ユーザーからの追加で収益を得る次の一手をどう考えているのか。

 「日本にもっとIoTを根付かせる、そのために入手しやすいスマートホーム機器を作って提供するという考えからATOM Camはスタートした。ATOM Camを起点としたスマートホーム機能の提供や、AI/IoTのサブスクリプション型サービスは次のステップとして当初から考えていた」(青山さん)

「AI人数カウント」サービスでは店内の混雑状況をタブレットに自動表示したり、顧客がスマホやWebブラウザーで確認したりできるようにできる
「AI人数カウント」サービスでは店内の混雑状況をタブレットに自動表示したり、顧客がスマホやWebブラウザーで確認したりできるようにできる
(出所:アトムテック)
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 サブスクリプション型サービスの第1弾が12月に月額500円で正式サービスを始めた法人向けの「AI人数カウント」サービスだ。飲食店や販売店などに設置したATOM Camの映像から店内にいる顧客の人数を自動的にカウントして表示する。6月に無料のβ提供を始め、約100ユーザーの声や利用状況を見ながらサービスを磨いてきた。当初から構想していた機能ではあるが、うまくコロナ禍の「密回避」の時流にも乗った形となり、メディアにもたびたび取り上げられている。

ATOM Camに接続して使う「ATOM Sensor」
ATOM Camに接続して使う「ATOM Sensor」
無線ドングルはATOM Cam背面のUSBポートに接続して使う。1つのドングルに最大100台のセンサーを接続できる仕様で、直線距離約100m到達する920MHz帯の通信でセンサーと本体をつなぐ(出所:アトムテック)
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 ATOM Cam を起点としたスマートホーム機能の第1弾は、10月にCFで公表した「ATOM Sensor」である。ATOM Camに接続する無線ドングルと赤外線を使った動体検知センサー、開閉センサーをセットにした。センサーはボタン電池で約18カ月動作し、直線距離で約100m到達する920MHz帯の通信で本体とつなぐ。開閉センサーはドアや窓の閉じ忘れ、家族などの帰宅の確認などに使える。モーションセンサーは人やペットの気配を検知できるほか、明るさセンサーとして使うとカーテンの開け閉めや郵便物の到着などを確認できる。

 まずはCFの支援者向けに2021年1月末の発送を目指す。その後はドングル、動体検知センサー、開閉センサーを各1個含む1セット4000円で一般販売を予定する。

 「ドングル1つに最大100個のセンサーを接続できる設計になっている。センサーの個別販売は検討しているし、温湿度センサーや水漏れセンサーといったセンサーの開発も進めている。また、ATOM Sensorを使ったホームセキュリティーや遠隔見守りサービスなど、サブスクリプション型サービスの展開も検討中だ」(中島さん)

 アトムテックでは現在、16人のスタッフが在籍、契約で稼働しており、その大半が開発に従事しているという。中国深セン近くの生産工場に関しては現地在住のスタッフと契約を交わし、生産管理を依頼している。残念ながら新型コロナの関係で、青山さん、中島さんは工場には行けないため、リモートでやり取りしている状態だ。

 11月末時点でATOM Camの販売台数は4万台を超えている。直近の目標は10万台。2500円という価格でAI機能付きのネットワークカメラは他には存在しない。その強みを生かして、まずはネットワークなどのリテラシーの高い層に訴求したいと考えている。これらの人たちから集まる声が改良や新機能、新サービス開発の種になると考えているからだ。

AI犬猫検知機能で自宅のペットの様子を把握
AI犬猫検知機能で自宅のペットの様子を把握
青山さんがATOM Camを発想するきっかけとなった機能だ(出所:アプリ画面を日経クロステックがキャプチャー)
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 そうして集めた意見などを基に製品やサービスを最適化し、2021年以降、一般のユーザーに向けて50万台、100万台とセールスを伸ばしていきたいという。一般ユーザーに使ってもらうために重要なのが使い勝手の部分だ。ここは徹底してチューニングしていると胸を張る。

 「アプリに関してはとにかく操作に迷わないように気を使っている。使い始めのハードルを下げたいと考え、アプリはバージョンアップを繰り返して問い合わせの多い部分を全部潰している。結果として初期セットアップの過程などは、当初からかなり変わって充実している。『こうやって使ってください』、『こういう部分が日本向けです』と押し付けるのではなくて、ユーザーの意見を聞いて機能を改良、追加する姿勢を忘れない。そうすれば日本向けの製品として完成していくと考えている」(青山さん)

 Amazon.comなどの通販サイトには中国のODM工場が造ったハードに、日本語のマニュアルを付けただけといった安直なデジタルガジェットがあふれている。

 ATOM Camはそれらとはまったく違う。きょう体こそODM品の流用だが中のハードを新たに起こし、丁寧にソフトを造り上げた意欲的な製品だ。その一方で、中国ガジェットが持つ「低価格」という魅力を兼ね備えている。ハードウエアをソフトウエア的に開発する手法や、コストを重視してデザインには手をつけないといった考え方もこれまでにない割り切り方や新しさを感じる。コロナ禍により、海外渡航ができず、深センに直接行くこともできない現在は、スタートアップのものづくりに逆風が吹いている状況だ。それでもこのようなスマッシュヒットを生み出せる同社の「製造ハック」は注目に値する。

■変更履歴
アトムテックの申し入れにより画像の一部を加工、差し替えました。 [2020/12/22 15:30]