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日本のネットワークカメラは高いと気づいた

アトムテック代表取締役の青山純さん
アトムテック代表取締役の青山純さん
ATOM Camのソフトウエア面の開発も主導する(出所:Web会議による取材時にキャプチャー)
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 青山さんはアトムテックを立ち上げる前は富士通でクラウド関連のソフトウエア開発やプロジェクトマネージャーなどを務めていた。そんなある日、1つのニーズを見つけた。

 「当時は出張で2~3日家を留守することが多く、自宅のペットの様子を外出先から見られるようにしたいと思いついた。ペットが心配だったから。だけど、いざそのためにネットワークカメラを購入しよう思ったらどれも高かった。当時は1万円以上の製品がほとんどで2万円を超えるものもあった。ならばもっと安くて使いやすいネットワークカメラがあったらビジネスになるとひらめいた。ちょうど独立・起業を考えていたタイミングだったのもある」(青山さん)

 ネットワークカメラを商材にすると決めた青山さんは富士通を退職。起業にあたって相談した富士通の同僚からマーケッターの中島浩則さんを紹介され、アトムテックがスタートする。

マーケティング面を担当する中島浩則さん
マーケティング面を担当する中島浩則さん
(出所:Web会議による取材時にキャプチャー)
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 「ネットワークカメラはあくまで我々の最初の製品。日本にもっとIoTを根付かせたい、IoT機器、スマートホーム機器をやろうと青山と意気投合した。国内のIoT機器はセキュアだけど高い。海外の製品は安いけれどもちょっとセキュリティーが心配。日本でスマートホーム機器が定着しないのはそこが課題だと考えた。そこでまずは『圧倒的に安いのに安心できるネットワークカメラ』を提供して、ビジネスを始めることにした」(中島さん)

 では肝心の「圧倒的に安いのに安心して使えるネットワークカメラ」をどう造るか。様々な検討を行った結果、思い至ったのは他社が既に使っているハードウエアの流用だった。

 中国には深セン(広東省)地区を中心にメーカーやサービス提供企業の要望に応じた機器を設計から生産まで一貫して手掛けるODM(Original Design Manufacturer)工場が多数ある。こうした企業が手掛けるネットワークカメラ製品の中から、既に他社で実績がある製品を敢えて選んで流用する。自社製品向けのカスタム開発を避けてコストを優先するいわば裏技的な作戦である。

 「大量生産の実績があるハードなら性能に対して安価だし、きょう体の金型代も不要。初期不良などの対策も済んで“枯れている”から信頼性も高い。これに得意のソフトウエアやクラウドの技術を組み合わせて勝負する。自社で1から作る道も考えたが、自分たちの目的は、性能が高く使い勝手の良いネットワークカメラを安価に提供すること。それにはこの手がベスト」(青山さん)

 そうやって探し出したのがATOM Camが採用したネットワークカメラのハードだ。中国の工場が設計・製造を手掛けており、例えば米国のWyze Labs(ワシントン州)はこのハードを使ったネットワークカメラ「Wyze Cam」を1台約25ドルで販売。発売2年で累計600万台出荷している。

 設計やきょう体デザインの権利を持っている中国のODM工場と契約。これに青山さんの専門であるソフト開発のノウハウを生かして日本市場のニーズにマッチしたアプリとミドルウエアを開発するというビジネスモデルで走りだした。