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苦渋の決断、ハード仕様の変更を決める

 大量販売の実績があり、ハードの製造開発では避けられない初期の不良も出し終え、改善が済んでいる、というのが他社ハードを流用する当初のもくろみだった。しかし、実際はそう簡単にはいかなかった。

ATOM Camの基板と当初の基板
ATOM Camの基板と当初の基板
部品だけでなく基板レイアウトなどが大きく変更されている(出所:アトムテック)
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 きっかけは2020年1月に始めたCFだ。CFは製品の事前宣伝のほか、米国などで実績があるネットワークカメラのハードを使い、ソフトを自社開発して独自性を出した製品が受け入れられるのか? ネットワークカメラにどんなニーズがあるかなどを調べる狙いもあった。

 「CFからいろんなユーザーの要望が見えてきた。多種多様なアイデアがあり、それらがすべてビジネスの種になりそうだった。これらに応えるためにも単にネットワークカメラを安く作るだけではダメだと考えるようになった」(青山さん)

「AI人数カウント」サービス
「AI人数カウント」サービス
店内にいる人数をカウントして混雑状況を可視化できる(出所:アトムテック)
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 ATOM Camの特徴の1つにAI人体感知やAI人数カウントサービスなど、AI画像認識技術を使った機能がある。青山さんは当初これらの機能をクラウド側で処理しようと考えていたが、ハードを改良してカメラ側で処理する「エッジ処理」の仕組みに切り替えた方がよさそうだと考えを改めた。

 「当初のハード仕様だと、将来的に目指す機能を実現する上で性能不足になりそうだった。またAI周りの機能はクラウド側でも処理できるが、そうするとサーバーの運用コストが高くなる。トータルコストで考えるとエッジ側(ネットワークカメラ)で処理した方が安くできる。ならばと、ハードの改良に踏み切った」(青山さん)

 具体的にはCPUを1.5GHz動作の高性能タイプに変更。そのため基板のレイアウトや部品構成なども変更せざるを得なかった。仕様変更に伴い、予算だけでなくスケジュールにも変更は発生した。ただ、今年の1月以降中国の工場では新型コロナウイルス感染症流行の影響で製造がストップ。2月の春節の休み以降も作業者が戻ってこられないといった状況が続いていたため、その期間に新ハードの設計・開発が進められたそうだ。

 とはいえ、ハードの変更にはかなり悩んだ。問題はコストと安定性。自社製品向けに新たに作り変えるとなると、既存のハードを流用するより原価は高くなる。またハードを一新すると、Wyze Cam向けなどで培った改善実績が生かせない。初期トラブルなどへの対応が避けられなくなるからだ。

 「幸いにもハード変更で大きなトラブルは出なかったが、小さい問題はやはりいくつかあった。例えば画質のチューニングのためのファームウエアのアップデートで、タイミングや個体の問題で失敗するケースがあり、製品交換で対応せざるを得なかった。事業を始める前はハードもソフト開発のようにあとからバージョンアップしていけばいいと考えていたところもあったが、やはりそんなに甘くなかった」(青山さん)