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クラウドファンディングの結果価格をさらに安くすることに

 一方、「圧倒的に安いのに安心して使えるネットワークカメラ」というATOM Camの戦略はCF支援者やメディアに好意的に受け止められた。CFでは2300人以上から6000台販売分以上の支援を得た。5月20日には直販による一般発売もスタート。販売開始直後、一気に1000台以上が売れ、初日に3000台を販売。翌21日には販売台数が累計1万台を超えたという。

READYFORでのクラウドファンディング
READYFORでのクラウドファンディング
開始から36日で目標の1000万円を達成した(出所:READYFORのWebページをキャプチャー)
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 「CFの6000台発注で『これはいけるかも』と手応えを感じた。ただ、一般販売時の初速1万台は全くの予想外だった。メディアなどで大きく取り上げてもらったとはいえ、まさかここまで行くとは思ってなかった」(中島さん)

 初速の大ヒットにはCFで見つけた1つの戦略がある。ATOM Camは首振り機能などがないため広範囲の監視のために複数台を欲しがる支援者が目立ったのだ。そこで当初2980円を想定していた価格を一般販売時に1台2500円まで下げた。1万円で4台購入できるようにして複数台購入を考えやすくするためだ。

複数のATOM Camの映像をアプリで一度に閲覧できる
複数のATOM Camの映像をアプリで一度に閲覧できる
(出所:アトムテック)
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 「価格を下げるのに私は大反対だったが、青山が絶対に譲らない。何度も話し合い、試算を繰り返して2500円に落ち着いた。それでも青山は最後まで1980円にならないか?と言っていた(笑)。それではさすがに売れば売るほど赤字になる。2500円ならギリギリいけるし、分かりやすいと説得した」(中島さん)

 かなり薄利だが、まずはATOM Camを市場に受け入れてもらうために思い切った値付けをしたという。直販とAmazon.comでの通販のみに絞っているのも価格を維持するためだ。これより安くするのは難しいためライバルが生まれにくいという狙いもある。

 「『中国ODMだから安いんでしょ』ではないギリギリの価格にした。単に深センから調達するだけではこの価格は絶対に無理。一方で品質を大事に考え、高価でも質の良い部品を選んでいる。安易に安い部品を使うのはトラブルの素。初期不良などが少なければ、返品交換やサポートコストなどが抑えられる。さらにユーザーからの口コミ評価も高くなり、不良によるブランド価値の毀損も発生しない」(青山さん)

 直販にこだわるのはコスト圧縮だけではない。サポートを通じてユーザーの声を一番近くで聞ける点も重視している。「ここには力を入れている」(青山さん)。初期のCFで多くのユーザーから機能やサービスのヒントを集め、成功につなげた経験を生かしたいからだ。