イメージセンサーや画像処理、画像認識といったカメラ分野に新技術が続々と登場している。撮影シーンや周囲の状況までを瞬時に把握できる知性を備えたカメラ技術、CMOSイメージセンサーに測距機能を追加する技術、波長別に撮像する技術、1000フレーム/秒の高速撮像を実現する技術などだ。新技術を紹介する。

知能化するカメラ、新技術の開発が相次ぐ
出典:日経エレクトロニクス、2017年5月号 pp.27-53
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
目次
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Prophesee、ヒトを真似て超える新撮像原理のセンサー
フランスPropheseeは、フレームという概念をなくした新原理のイメージセンサーの開発を進めている。既存のイメージセンサーでは、変化する対象物を動画として撮像するため、毎秒30コマといったフレームごとに静止画を取り込む。同社のイメージセンサーは、画素を設ける点では既存技術と同じである。既存のイメ…
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静岡大学、時間分解能0.8nsのCMOSセンサー
リアルタイム蛍光寿命測定に向けた高速(時間分解能が高い)イメージセンサーの研究開発が活発である。そんな中、時間分解能が0.8nsと高いイメージセンサーを試作したのが、静岡大学である。
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ソニー、偏光識別機能を低コストにCMOSセンサーへ
ソニーは偏光機能を低コストに付加できるイメージセンサーを開発している。自動車のフロントガラスに反射した光を分離することで車外から車室内の様子を鮮明に撮影できるようになる。物体表面の凹凸などの状態によって、偏波特性が変わることから、表面状態の推定に生かせる。
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パナソニック、有機薄膜で多波長化する技術
パナソニックは、可視光の3波長(3原色)に加えて近赤外光を取得できるセンサーを開発した。人には見えない近赤外光を生かすことで、例えば人には見せず、マシンビジョンだけに見せるマークを商品に付けるといった応用が可能になる。
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ソニー、半導体前工程による光学フィルター搭載の多波長CMOSセンサー
ソニーは、低コストで小型化が可能なマルチスペクトルイメージセンサーを開発中である。波長選択型の光学フィルターをイメージセンサー前面に低コストで形成する技術を使う。光学フィルターは、半導体の前工程で作り込む。透過させたい波長に対して微小な構造を周期的に作ることで実現している。プラズモニクスの原理で光…
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リコー、ステレオカメラによる3D地図の生成技術
リコーは、ドローン向けステレオカメラを開発した。屋内や橋下などのGPSの受信が困難な環境下での自律飛行に向けたものである。
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東芝、単眼1ショットの“ステレオ視”技術をドローンやロボットへ
東芝は、単眼カメラによる1回の撮影でカラー画像と距離画像を同時に得られる技術を開発、自動運転車やドローン、ロボットなどでの実用化を目指している。独自のカラーフィルターと画像処理技術を汎用的なイメージセンサーと組み合わせることで、ステレオカメラ並みの精度の距離画像を低コストに得られる。
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ブルックマン、高速動体の距離測定誤差を低減する技術
静岡大学 教授の川人祥二氏の研究成果などを事業化しているベンチャー企業のブルックマンテクノロジは、手を振った状態など速く移動している物体があるシーンでもToFによる測距誤差が低下しにくい素子技術を開発した。ToFセンサー向け受光素子では一般に、2つのフレーム間の差を取ることで背景光を除去する。次の…
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静岡大学、950nmの近赤外光で距離画像を長距離まで
静岡大学 電子工学研究所 教授の川人祥二氏らは、ToF(Time of Flight)方式を使って距離画像を最大100m前後まで取得できるようにする長距離化技術の開発に取り組んでいる。太陽光のノイズが約40%(1/2.5倍)と少ない950nm前後(940~960nm)の近赤外光を使う。受信光のS/…
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ソニー、距離測定機能をCMOSセンサーに
ソニーは、30m程度までの距離画像を捉えるため、イメージセンサーにToF(Time of Flight)技術を適用する開発を進めている。2015年に買収したベルギーSoftkinetic Systems社の技術をベースとし、ソニーセミコンダクタソリューションズ内で2017年第1四半期に組織化された…
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オムロン、製造ラインのパターンマッチングを高速・高精度に
オムロンは、製造ラインに適用するパターンマッチングをいっそう高速・高精度にする開発を進めている。製造ライン向け画像処理システム製品として2013年6月から販売している「FHシリーズ」では、同社従来製品に比べて大幅な高速化を実現した。カメラによる画像取得の時間や、コントローラーでの画像処理の時間、セ…
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三菱電機など、ロボットで棚から物を取り出す認識技術
三菱電機と中部大学の「Machine Perception and Robotics Group(MPRG)」、中京大学のグループは、これまで人間でしか実行できなかった、倉庫内の棚から物を取り出したり、箱から物を取り出して棚に入れたりするロボットシステムを共同開発した。画像認識能力を高めて実現して…
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東大の高速ビジョン、産業ロボのトレーシングに応用
東京大学 石川・渡辺研究室は、ソニーグループと共同で新開発した高速ビジョンチップの応用開拓に取り組んでいる。一例が、トレーシング動作への活用である。同動作は、溶接・溶断、シーリング、レーザー加工、塗装・塗布といったさまざまな作業向けロボットで必要になる基本的、かつ重要なタスクである。従来の方法では…
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日立やキヤノンが開発、複数カメラの画像から人物を追跡する技術
日立製作所やキヤノンは、複数の監視カメラに映った対象人物を追跡する技術をそれぞれ開発している。いずれも、複数の監視カメラにまたがって対象人物を追跡し、その移動経路を地図上に表示できる。
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NEC、顔の一部の画像から認証する技術
NECは、多数の被写体が映った監視カメラの動画から顔認証を行う技術の開発に力を入れている。同認証は、カメラの設置場所や画質などの環境条件や被写体の動作条件の影響を受ける。このため、カメラの前に立ち止まり、静止した状態で撮影して行う顔認証よりも高度な技術が必要になる。
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パナソニック、人が見やすい画像へ自動変換する機能をカメラに
パナソニックは、撮影した場面を自動で認識し、人が見やすい画像を撮れるように各種設定を自動調整する機能を実用化している。例えば逆光時に歩行する人の顔を識別できるように自動で補正する。2017年3月に販売を始めた監視カメラ「i-PRO EXTREMEシリーズ」に、こうした機能を備えた。
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中部大学、骨格検出と顔向き推定の画像処理を低負荷化
中部大学工学部の「Machine Perception and Robotics Group(MPRG)」は、1つのDCNN(Deep Convolutional Neural Network)にIR(赤外線)画像と距離画像を入力することで、運転手の骨格検出と顔向き推定の2つのタスクを実行できる手…
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デンソー、運転シーンをDNNで認識する車載カメラ
デンソーは、深層学習を適用したニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)による画像認識に力を入れている。DNNの適用により、人や自動車のみならず、信号や道路などを含む運転シーン全体を認識できる技術を開発中だ。画像の画素ごとに、どのクラスのオブジェクトに属しているのかを…