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 ソニーは、30m程度までの距離画像を捉えるため、イメージセンサーにToF(Time of Flight)技術を適用する開発を進めている。2015年に買収したベルギーSoftkinetic Systemsの技術をベースとし、ソニーセミコンダクタソリューションズ内で2017年第1四半期に組織化されたセンシングソリューション事業部で事業化に取り組んでいる。

 同センサーの特徴は、低消費電力化と高精度化を両立しやすい点だ。ToFでは、近赤外ビームを照射し反射光との時間差から距離を推定する。時間差を測定するデバイスの構造にSoftkinetic Systemsの技術を適用している。

 同社のデバイス技術には、反射光の受光部に空乏層を使わない点に特徴がある(図1)。一般に、イメージセンサーでは、受光部で光子によって生じるキャリア(電子または正孔)の蓄積量から時間差を推定する。光子で生じる以外のキャリアが雑音とならないように、空乏層を設けることが多い。同社の技術では、キャリアが存在するp+のSi基板を使うものの、相殺させている。

図1 ソニーが開発中の測距可能なイメージセンサー
図1 ソニーが開発中の測距可能なイメージセンサー
ソニーが2015年に買収したベルギーSoftkinetic Systemsの距離画像を得るための原理。ToF測定を簡易かつ高精度に実現できる。既にモジュールを開発済み(a)。デモを実施中(b)。光子の入射で生じる電子を集める。電子は、印加する電界によってコレクター1またはコレクター2に蓄積できる。光線の照射を停止した瞬間に電界をかける向きを変えることで、蓄積電荷の量からToF(Δt)を算出できる。Q1とQ2の和とQ2の比がΔtに比例する(c)。(写真と図:ソニー)
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