静岡大学 教授の川人祥二氏の研究成果などを事業化しているベンチャー企業のブルックマンテクノロジは、手を振った状態など速く移動している物体があるシーンでもToFによる測距誤差が低下しにくい素子技術を開発した(図1)。ToFセンサー向け受光素子では一般に、2つのフレーム間の差を取ることで背景光を除去する。次のフレーム(露光タイミング)になるまでに物体が動くと、前フレームの物体が残像として残ってしまう。背景光が雑音となって測距精度の低下を招く。
そこで同社は、1フレームの間に背景光を除去して距離画像を出力する工夫を施した。高速物体があるシーンでも背景光を除去しつつ、残像を発生しないようにできる。
1フレーム内で背景光を除去する仕組みは以下の通り。異なる連続した時間窓(時間窓1と時間窓2)で、それぞれ発生・蓄積した電荷(Q1’とQ2’)の差を利用して、参照光と反射光の時間差を算出する。この結果を基に距離を得る。このとき、参照光を照射する前に、背景光だけを受光し、発生した電荷Q3を求める。Q1’とQ2’からQ3を引くことで、背景光の影響を抑制する。Q1’とQ2’、Q3の3つの電荷をためる蓄積部をそれぞれ画素内に設けることで、1フレームの時間(露光時間)内に3つの電荷を得られるようにした。これで残像の発生を抑制できる。この手法は、もともと静岡大学のグループが開発したもの。