米マイクロソフト(Microsoft)は2019年2月24日、新型のMR(Mixed Reality)用ヘッドマウントディスプレー(HMD)「HoloLens 2」を2019年内に発売すると発表した。従来機種の「HoloLens」に比べて、視野を広げ操作UIを改善するなど、正常進化を遂げた。この連載では、初代となるHoloLensを分解し、その構造を分析する。(前回はこちら)
“見せる”技術の最後、つまり導光板はプロジェクターのスクリーンに相当する。この導光板は、前回のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)モジュールにもまして製造にコストがかかっている可能性が高い。
導光板は3枚のガラスと1枚の保護カバーを貼り合わせてある(図1)。重さは38.6gもする。ウエアラブル端末を設計する技術者D氏が、ガラスの2カ所に刻印された位置合わせマークを発見した。「半導体のリソグラフィー技術などで使われる位置合わせ技術ではないか」(D氏)という。
導光板には回折格子と見られるエリアが左右3カ所ずつある。1つは、導光板の中央上部にある穴のような「瞳径」と呼ばれるエリア。そして、導光板の上部にある三角形のエリアと下部にあるやや広いエリアの3カ所だ。これらの回折格子は2段階で映像を拡大する虫眼鏡のような機能を果たしている。
導光板中では、計4回光を反射しているとみられる。具体的には、LCOSモジュールから届いた映像の光束は、「瞳径」に入射し、約90度曲げられて水平方向に拡大される。次に、光は上部の回折格子で再び約90度曲げられ垂直方向に拡大される。導光板の下部にある回折格子で光は利用者の目に向かってさらに約90度曲げられる。
利用者の目にはこの下部の回折格子エリアが、プロジェクターのスクリーンのように見えるわけだ。ただし、ほぼ透明な導光板中で反射を繰り返すため、相当量の光が失われる。「効率は10%程度ではないか」(技術者A氏とC氏)。その分、LEDの発光出力を大きくする必要があったようだ。